人間国宝や気鋭作家の秀作を集めた「第69回日本伝統工芸展」(山陰中央新報社など主催)が7日、松江市袖師町の島根県立美術館で開幕した。山陰両県の作家12人の作品を含む271点を展示する。25日まで。
陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門で作品を公募し、島根県からは8人が入賞・入選、鳥取県からは4人が入選した。
松江市の高橋香葉さん(55)は野ブドウが題材の漆芸作品「存清螺鈿(ぞんせいらでん)箱『うつろう』」を出品。ふたを開けると底に螺鈿の野ブドウが目に入り、つぼみが花を咲かせて実をつけるまでの初夏から秋への移ろいを表現した。安来市の永田佳子さん(70)が手がけた染織作品「広瀬絣(かすり)着物『天空海濶(かいかつ)』」は、世界遺産のマチュピチュ遺跡に着想を得た。藍染めのかすりに天へ昇るような石垣をイメージしたという四角形の文様を描いている。
毎年鑑賞に訪れるという倉吉市上井町の無職牧野有孝さん(74)は「それぞれの作品の色合いから作家の感性が感じられ、良い刺激をもらった」と話した。
会期中無休。11日午後1時半から人間国宝の染織作家小宮康正さんの講演会があり、10、11、17、18、25日は午後2時から出品作家の展示品解説もある。
(中島諒)