リーグの「30周年オープニングイベント」で撮影に応じる(左から)中村憲剛さん、松木安太郎さん、野々村芳和チェアマン、観月ありささん、槙野智章さん、内田篤人さん=1月25日、東京都内
リーグの「30周年オープニングイベント」で撮影に応じる(左から)中村憲剛さん、松木安太郎さん、野々村芳和チェアマン、観月ありささん、槙野智章さん、内田篤人さん=1月25日、東京都内

 創設30周年を迎えるサッカーのJリーグが開幕した。企業チーム主体のアマチュアリーグをプロ化してJリーグがスタートしたのが1993年。日本のスポーツ風土に劇的な変革をもたらした成果は高く評価できる。その上で、なお残る多くの課題に向き合いたい。

 93年の第1回リーグ戦に参加したのは10クラブ。その後、新規参入が続き、2部にあたるJ2、3部にあたるJ3の各リーグも設けた。今季はJ1からJ3までに計60クラブがひしめく大きな組織に成長した。

 参加クラブのホームタウン所在地は41都道府県を数える。創設時に掲げた「地域密着」の理念が全国に広がった。「地域に根ざすホームタウン。地元住民がトップレベルのサッカーとふれあい、スタジアム周辺を整備する」との設立趣旨に沿い、クラブ名から企業名を排した運営は共感を得た。

 アルビレックス新潟のようにサッカーに加えてバスケットボール、野球、スキー、陸上などのチームも擁する地域の総合型クラブに発展させた例もある。

 もう一つの目標だった「日本サッカーの強化と発展」では大きな収穫があった。プロリーグで力をつけた日本代表は98年のワールドカップ(W杯)フランス大会に悲願の初出場を果たし、W杯の常連出場国となった。Jリーグを踏み台に欧州各リーグに進出する日本選手も増え、昨年のW杯カタール大会ではベスト8へあと一歩に迫った。

 Jリーグの成功例は、普及と強化に苦しむ他競技にも刺激を与えた。バスケットボール、ラグビーなどでもプロ化への流れが進み、地域と連携する試みが続いている。

 野球中心だった日本のプロ球技に風穴をあけたJリーグだが、欧州の先進リーグほど成熟したわけではない。好選手の海外流出による空洞化の懸念も指摘されている。

 健全なクラブ運営の基盤となる経営状況は新型コロナウイルス禍の影響もあり落ち込んでいる。2021年度の決算では、当時の参加57クラブのうち22クラブが単年度赤字となり、12クラブが債務超過となっていた。

 収入の柱となる入場者数はJ1で19年に過去最高の1試合平均2万人超えを果たしたが、入場制限があった20、21年は5千~6千人台に激減。22年に1万4千人台まで戻した。入場制限が解除され、声を出しての応援もできる今季は、2万人台復活を目指したい。サポーターと一体となったスタジアムの熱い風景はJリーグの象徴でもある。

 試合中継のテレビ離れも問題だ。Jリーグは有料のネット配信会社と12年間で約2200億円の放送権契約を結び、収入を各クラブにも配分している。一方、無料で視聴できるテレビ放映の試合数は多くない。地方局に働きかけて地元クラブの中継放送を増やすなどの対策を強化したい。

 公立中学校の部活動の一部を学外に委ねる地域移行の動きが始まった。Jリーグの各クラブは18歳以下の年代別育成組織を持つ。リーグ参入を目指すJ予備軍も控える。地域での裾野は広大だ。これまで距離を置いていた学校体育と、指導者派遣などで連携する方策も模索してほしい。

 30周年の今季、Jリーグは「60クラブが各地域で輝くこと」を成長戦略の柱に据えた。地域密着の成否が問われ続ける。