島根県東部の高校演劇部と市民劇団ユニットによる公演が3月10~12日に東京都内の劇場である。昨年3月、演劇指導者の亀尾佳宏さん(49)=松江工業高校教諭=が「若手演出家コンクール2021」で最優秀賞を受賞したのを記念し、3演目を上演する。本番が近づき、脚本・演出を手がける亀尾さんの指導で、出演者が稽古に励む様子を写真で紹介する。
(雲南支局・山本泰平)
東京公演には三刀屋高校演劇部と同校掛合分校演劇同好会、松江工業高校演劇部、雲南市を活動拠点とする「劇団一級河川」が出演する。


▽最優秀賞で東京公演
亀尾さんは教諭として高校演劇部を指導する傍ら、市民演劇で脚本や演出を務める。東京公演は最優秀受賞で得た機会。
東京都世田谷区の小劇場で公演し、掛合分校は太宰治の「走れメロス」に歌や即興を交え喜劇仕立てにした「走れ!走れ走れメロス」を披露する。



三刀屋高校は掛合分校などとともに、太宰治原作で手紙を題材にした姉妹の愛情物語「葉桜と魔笛」を上演する。松江工業高校も別版の葉桜と魔笛を演じる。亀尾さんが舞台に立つサスペンス時代劇「酒とお蕎麦(そば)と男と女」には、掛合分校と劇団一級河川が登場する。
▽本番前に熱い稽古
2月19日は「走れ!走れ走れメロス」と「葉桜と魔笛」の稽古があった。稽古では出演者が亀尾さんから指導を受け、表現やせりふ、立ち位置を確認した。
稽古は終始和やかなムード。メロスの稽古には、ともに三刀屋高校掛合分校3年で演劇同好会の曽田昇吾さん(18)と常松博樹さん(18)が参加した。


亀尾さんの指導のもと、2人はせりふや動きを確認し、ハキハキとした声を稽古場に響かせた。時折、アドリブを加えたり、アクロバティックな動きを取り入れりした。汗をかきながら笑顔で稽古に取り組む姿は、心の底から演劇を楽しんでいるようだった。
「葉桜と魔笛」の稽古では、三刀屋高校2年で演劇部の勝部瑞穂さん(17)と劇団一級河川の堀江ゆずなさん(24)、曽田さんが参加した。白い衣装に身を包み、登場人物の手紙を読むシーンなどを練習し、声の強弱や表情で思いや感情を伝えていた。
亀尾さんは「演劇を選んでくれた生徒が多くの客の前で表現することで、楽しさを感じてほしい」と、高校生の熱い姿を、さまざまな人に見せたいと意気込む。
▽劇団の研究生に
3作品すべてに出演する三刀屋高校掛合分校3年の曽田昇吾さん(18)は、東京都にある劇団「文学座」付属の演劇研究所の入所試験を突破し、4月から研究生として通う予定。東京でアルバイトをしながら演劇を学び、本公演に出られる「座員」を目指す。
高校2年生の時、当時三刀屋高校掛合分校の教諭だった亀尾先生の誘いで演劇を始め、その魅力に取りつかれた。

掛合分校の仲間と「走れ!走れ走れメロス」を上演したり、大人に交じって雲南市創作市民演劇に参加したりする中で、仕事として演劇をすることに憧れを持った。「自分の好きなことをやっていきたい」。そう思い、演劇研究所の入所試験を受けて合格した。


「演劇が一番にやりたいこと。狭き門だと分かった上で挑戦したい」と熱い思いを話し「役者としてご飯を食べていけるようになって、応援してくれている親や先生に恩返しをしたい」と力を込めた。
▽活動紹介する映画も
また、曽田さんら三刀屋高校掛合分校演劇同好会4人の活動を撮影したドキュメンタリー映画「走れ!走れ走れメロス」は3月3~31日、東京都世田谷区の下北沢トリウッドで上映される。
同映画は2022年9月の下北沢映画祭で審査員特別賞など4部門を受賞した。長野県のうえだ城下町映画祭・自主制作映画コンテストでも実行委員会特別賞に輝くなど、全国各地で高い評価を得ている。