短歌 安部 歌子選

銀山の戦国時代に陽を当てし女の生涯直木賞成す         大 田 永野砂由美

 【評】千早茜さんの小説『しろがねの葉』を詠う。上句の表現に物語に対する作者の深い視点が感じられ注目した。上句から下句への展開にも無理がない。

息子(こ)の発ちし後の部屋はひんやりと時計の音だけ残されている   大 田 坂本 恵子

 【評】時計の音だけがかすかに響く部屋に作者は立っている。感情語を使わず母親の寂しさを伝える。よくある素材ながら下句の表現が一首を深くした。

闇の中電源ランプを標とし水底を這...