当選を喜ぶ並河孝成氏(左から2人目)と支援者たち=島根県知夫村、自宅
当選を喜ぶ並河孝成氏(左から2人目)と支援者たち=島根県知夫村、自宅
当選者を決めるくじ引きで使われた鉛筆
当選者を決めるくじ引きで使われた鉛筆
当選を喜ぶ並河孝成氏(左から2人目)と支援者たち=島根県知夫村、自宅
当選者を決めるくじ引きで使われた鉛筆

 23日投開票の島根県知夫村議選(定数8)には10人が立候補し、8番目の議席を争う候補者の票が同数となり、くじ引きで当選者が決まった。当選した並河孝成氏(75)=3期=は、父親が32年前の村議選で抽選により落選しており「不思議な巡り合わせだ」と数奇な運命に驚いた。 (鎌田剛)

 

 投票率90・86%で467人が投票した村議選は、午後8時に始まった開票作業が50分ほどで終わった。わずか10票の間に5人の候補がひしめく僅差となり、並河氏と現職の候補が32票で並んだ。その場で公職選挙法に基づき、抽選の実施が決定した。

 選挙管理委員会の担当者が事前に用意してあった鉛筆の端を削り、1から10までの番号を手書きしたくじを封筒に入れた。番号が少ない方が上位になると説明し、2人の立会人が届け出順にまずくじを引く順番を決めた。

 先に並河氏の立会人がくじを引くことになり、本番では「1」の〝最強カード〟を引いて当選が決まった。

 並河氏は支援者とともに自宅で待機していたが、くじ引きどころか当落の連絡もなく、緊張の時間が続いていたという。しばらくして、くじを引いた立会人が到着して当選を知った。

 並河氏の父親の故孝雄さんも村議で、1991年4月の村議選では43票の同数で新人候補と並び、抽選で落選した。「当時、父は落ち込んだ様子だった」という。この時、くじを引いたのは並河氏の弟。今回も渋る弟に立会人を依頼し、当選を引いたことに「挽回してくれた」と喜んだ。

 高齢者向けに、高い階段を上る必要のある一宮神社に車で入れる道を付けることや、観光の目玉の赤ハゲ山周辺整備事業に力を入れたいとし「議会で物を言うことが大事だ。老体にむちを打って最後の奉公をしたい」と意欲を見せている。

 島根県選挙管理委員会によると、平成以降で県内のくじ引きによる当選者の決定は、91年の知夫村議選を含め計5町村議選で起こった。直近では2017年の飯南町議選で3人が同数で並び、くじ引きで2人の当選と1人の落選を決めた。くじ引きの動画はこちらから