岡山大の松村圭一郎さんと広島大の松嶋健さんが主催する「旅する大学」に参加した。2人とも私が敬愛する研究仲間だ。3月の開催地は出雲、藤原さんが育った場所を歩くことも目的です、という松村さんの心遣いに感謝しながら、快晴の空の下、旅をした。
出雲市のセンスフルな本屋「句読点」を中心に企画された各所への訪問によって大学の外の方々と言葉を交わし、大学のぬるま湯に漬かったわが学問をジャングルに放ち鍛え直すようなものだった。
出雲大社、平田の木綿街道、木次乳業、奥出雲ワイナリー、奥出雲の鉄穴(かんな)流しの残丘、通ったり訪れたりしたことがあるはずの場所を、えりすぐりの案内者に導かれて歩いた。ここは私が馴染(なじ)んできた出雲だろうか。立ち止まっては自分の記憶をノックするようだった。
2歳から12歳まで住んだ出雲市と、...