短歌 寺井 淳選

決算の数字固まりコロナ禍のひととせ想ひ深き息吐く 出 雲 小林  香

 【評】コロナ禍の歌はたくさん詠まれていますが、多くはニュースをそのまま述べて、最後に感想を付け加えるパターンが多いようです。この歌には作者独自の立場と言葉があって、「深き息」の響きが伝わります。

 

母さんの喜怒哀楽を秘めし針今や出番なく針山に立つ 松 江 古和 嗣男

 【評】衣服の多くが手縫いであった時代の針山や指ぬきは、母親の思い出につながる大切な素材です。衣服の向...