天皇杯サッカー島根県予選決勝でゴールを挙げて喜ぶベルガロッソいわみの選手=4月23日、益田市の島根県立サッカー場
天皇杯サッカー島根県予選決勝でゴールを挙げて喜ぶベルガロッソいわみの選手=4月23日、益田市の島根県立サッカー場

 子どもの頃、絶対にかないっこないと思っていた夢の一つが、日本サッカーのプロ化だった。1970~80年代、観客が大勢入っているのをテレビ画面で確認できたのは、元日の国立競技場である天皇杯決勝、それに続く、全国高校サッカー選手権準決勝と決勝、さらに年末に欧州と南米のクラブチャンピオンが同じ国立で激突するトヨタカップくらいだっただろうか▼だが、観客がいない所でも強烈なプロ意識を持つ選手はいた。単身乗り込んだブラジルから90年に帰ってきた三浦知良選手は、今なお現役でプレーする象徴的な存在だ▼日本サッカーの黎明(れいめい)期をトップ選手として過ごし、解説者として活躍した松本育夫さんから、日本サッカーの進展について「観客が1人でも5万人でも同じモチベーションでゲームをできるかどうか。選手教育が重要だ」と聞いたことを、いま思い起こす▼93年5月15日、満員の国立でJリーグ最初の試合が開催されて30年の歳月が過ぎた。いまや、Jリーグ所属チームがない都道府県の方が珍しく、島根も数少ないその一つになってしまった。ただ悲観することはない。県西部を拠点に活動する中国リーグ所属のベルガロッソいわみが、2030年までのJ参入を目指す▼21日の天皇杯の初戦で勝利すれば、次戦はJ1の強豪・ガンバ大阪だ。節目の年に自らの現在地を確認するのに、これほどのチャンスはない。(万)