最も好きな映画音楽はアーノルド・シュワルツェネッガーの出世作「コナン・ザ・グレート」(1982年、米国)のものだ。剣と魔法の世界という想像が膨らむ舞台設定、復讐(ふくしゅう)劇という単純明快なストーリー、シュワルツェネッガーの筋肉美や戦闘の迫力ある映像を、重厚で情感たっぷりの音楽が盛り上げる。
子どもの頃に邪教の教祖タルサの騎馬軍団に村を襲われて両親を殺され、奴隷となった主人公コナンが、屈強な青年に育って剣士となり復讐する物語。初めて見たのは中学時代の1985年、テレビの「水曜ロードショー」だったと思う。当時、対話で進める米国のテーブルトーク・ロールプレーイングゲーム「ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」の日本語版が出て、はまっていた。剣と魔法の世界という舞台が共通するコナンにも感動した。
特に好きな曲は、序盤の村襲撃時に流れる「Riders of Doom」(タルサの騎馬軍団)。異変を告げるトランペットやドラムに続き、弦楽器の静かなメロディーがひたひたと迫る感を醸し出し、賛美歌のようなコーラスが始まる。このコーラスが荘厳かつ不気味。じわじわと盛り上がって一気にハイトーンの叫びになる。グリーグ作曲「ペール・ギュント」の「山の魔王の宮殿にて」みたいな盛り上がり方だ。

音楽を手がけたベイジル・ポールドゥリスは、後の「レッド・オクトーバーを追え!」(1990年、米国)でもコーラスを効果的に使っており、興味深い。
序盤と同じコーラスはタルサ騎馬軍団を迎え撃つ終盤のヤマ場の曲「Battle of The Mounds」(墳丘の戦い)でも登場する。村襲撃を思い出させ、復讐に臨む感を高める。タタタタタタタタ…と小刻みな打楽器(?)も加わり、緊迫感が増す。
オープニングのテーマ曲「Anvil of Crom」(鋼の神クロムの金床)はとにかく熱い。ダダダ、ダンダ、ダンダンダン…と力強いドラムで始まって勇ましいホーンが加わり途中、弦楽器の切ないメロディーがいいアクセント。
この曲は中盤の見せ場でも流れる。敵基地潜入に失敗して死にかけたコナンが生き延びて再び基地に乗り込み暴れる場面。タルサの教団ナンバー2の屈強な高僧が現れて「貴様、生きていたのか」的な感じで「you…」とつぶやく。この映画で一番好きな場面で、音楽が躍動感を高める。
映画音楽に限ってもコナンは傑作だ。匹敵する作品はSFアニメ「王立宇宙軍 オネアミスの翼」(1987年、ガイナックス)の音楽くらいだと思う(坂本龍一作曲)。スマホに入れていて、聴くと映像が頭に浮かび、楽しめるほど。音楽の力を改めて思う。
(志)