西村秀樹さん
西村秀樹さん

 東京パラリンピックで日本女子チームが銅メダルを獲得したゴールボール。視覚障害者のスポーツとしてだけでなく、健常者もともに楽しめるスポーツとして注目されている。滋賀県ゴールボール協会会長で、日本ゴールボール協会の技術部長を務める滋賀県守山市の西村秀樹さん(61)が5月20日、市民向けの競技体験会で出雲市を訪れた。西村さんにゴールボールとの出会いや普及への思いを聞いた。

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 ーゴールボールを始めたきかけは?
 「フェスピックと呼ばれるアジア太平洋地域の障害者スポーツ大会でゴールボールが採用され、東京、京都の2ヵ所を拠点に選手を養成しようということになり、1992年から始めました。27歳で失明し、3~4年経ち、歩行訓練などで1人でいろいろなことができるようになった時期で、拠点が隣県の京都にあったので、新しいことに挑戦してみようと思いました。今年でゴールボールを始めて31年になります。おそらく日本で一番長くやっている選手ではないかと」

 ー競技の魅力は何ですか?
 「視覚障害者も健常者も同じ状況で取り組めるということではないでしょうか。アイシェードをすれば健常者も同じ条件になります。言葉の壁もありません。国が違っても、言葉が通じなくても同じルールで一緒に楽しめることが競技の魅力です。あと現在、協会員は約100人で、それ以外を含めても競技人口は200人くらい。頑張れば、日本代表になれることも、取り組むモチベーションになります」

体験会で自らゴールボールの止め方を披露する西村秀樹さん(手前)

 ーどのように普及に取り組んでいきたいですか?
 「代表チームの強化と普及を両輪で考えています。代表チームが強くなれば注目が集まり、普及にも追い風になります。健常者の方にもぜひ取り組んでもらいたいです。ゴールボールは1試合で6人がプレーしますが、試合をするには審判など13人のスタッフが必要になります。審判は視覚障害者ではできません。そのためにも多くの人に競技に親しんでもらいたいです。ただその際『お手伝い』ではなく『一緒にやる』というスタンスで参加してもらいたいです。競技をすれば楽しいですし、たくさんの仲間ができます。『一緒にやりましょう』と呼び掛けたいです」

 「最近は視覚障害のある子どもたちも盲学校でなく、地域の学校で学ぶケースが増えています。そのため、なかなかゴールボールを知る機会が少ないです。(島根大医学部のように)眼科の医師が興味を持って取り組み、視覚障害者とゴールボールの接点になってもらえることはうれしいです」

 ーゴールボールを通じて社会全体に障害者スポーツへの理解が広まるといいですね。
  「スポーツは自分をさらけ出すことができます。堅苦しいことではなく、多くの人が一緒にゴールボールなど障害者スポーツに参加して楽しんでもらうことで、よりお互いに通じ合えるのではないでしょうか」
 

体験会の終了後、参加者と記念撮影する西村秀樹さん(前列の左から5人目)