▽第四章 標的(十)

 矢上は目を閉じて深く息を吸い込んだ。広大な夜の雑木林は、微かに芳ばしい枯葉と土の匂いがした。キンと冴え渡った闇の中、脇(わき)が懐中電灯を手に駈け戻って来た。...