150冊の本、国内外で拾った石や大きな巻き貝、恐竜の模型に書や絵…。段ボール箱10箱分を持参したという、いろいろなものに囲まれた会場で、坂本文江さんの「テーマトークin出雲」は始まった▼浜田市出身。都内の出版社でコピーライターとして活躍したが、旅好きの血が騒ぎ、アフリカに行きたいと5年で退職。帰郷後は高校の講師を経て書道教室の主宰、フリーペーパーの発行など活動はとどまらず、合間に本を読んで、旅に出る。決めた題材の関連本を紹介するテーマトークはライフワークの一つだ▼「宇宙に行きたいなら家を売って行きんさい」と言う良夫と子宝に恵まれた。だが、2人目を産んだ後「また時間を取られる」と、もやもやした感情もあった。その頃知人に頼まれ、子ども会で海の話をしたのが始まり。自分の話に想像力を膨らませた子が「海に行きたい」と言った体験に感激して以来32年、テーマトークは820回を超えた▼「ぼーっとした子」だったが、祖母が布団の中で読み聞かせてくれた多くの本を礎に、出会った人の「気」を吸収したという今は、好奇心と行動力に満ちる。浜田川沿いの生家は、ブックサロンとして開放。気持ちの良さが多くの人を引き付けている▼28日は、浜田市立中央図書館でテーマトークがある。坂本さんの圧倒的なパワーに、焦りやうらやむ気持ちを挟む余地なく、楽しめるはずだ。(衣)