展示室に入った途端、目の前に広がった惨状に圧倒された。大型のガラスケースには焼け焦げた学生服やもんぺなどの遺品が並び、通路壁面にはやけどを負った被爆者を捉えた写真や、被爆者が描いた「原爆の絵」が展示されていた▼耐震補強工事などに伴う2年間の休館を経て、広島市の原爆資料館本館がリニューアルオープンしたのが4年前。その1カ月半後に見学したが、「被爆の実相」の追体験をテーマに掲げ、被爆者の人生に焦点を当てた新たな展示手法に、核兵器の恐ろしさを改めて感じた▼初めて来館したこの人たちも、同じ思いを抱いてくれたのだろうか。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)初日の19日、来日した各国首脳がそろって足を運んだ▼ただし、訪問内容は非公開。首脳らが具体的にどんな被爆資料を見たのか、本館を訪れたのか否かさえ、日本政府は明らかにしていない。78年前に原爆を投下した米国に加え、英仏という核保有国の首脳も含まれる。そうした国への配慮なのだろうか。だが「核なき世界」を本気で目指すのではあれば、遺品を見つめる首脳たちの様子を広く公開すべきだった▼サミット最終日のきのうはウクライナのゼレンスキー大統領も来館した。核兵器による威嚇を繰り返すロシアのプーチン大統領の不当性を世界にアピールする狙いもあっただろう。それだけでも被爆地広島を訪れた意義がある。(健)