松江保護観察所で辞令を受け取る新任保護司(左)。島根県内の保護司は515人(定員510人)で、全国で唯一定員を満たしている=2022年12月、松江市内
松江保護観察所で辞令を受け取る新任保護司(左)。島根県内の保護司は515人(定員510人)で、全国で唯一定員を満たしている=2022年12月、松江市内

 刑務所から仮釈放された人や非行で保護観察となった少年の立ち直りを支援する保護司のなり手不足と高齢化が深刻さを増している。法務省は有識者の検討会を設置。ボランティアの保護司について、新任は原則66歳以下という年齢制限を緩和するほか、無報酬としている保護司法の規定を改めるなど、制度見直しに向けて議論を始めた。

 法相が委嘱する保護司は保護観察官と連絡を取りながら、対象者と定期的に面会を重ね、住まいや仕事を探す相談に乗ったり、生活指導をしたりする。交通費など実費以外は支給されない。政府が3月に閣議決定した「第2次再犯防止推進計画」でも、なり手確保が課題に挙げられている。

 裁判員裁判で増えている保護観察付きの執行猶予判決を受けた人なども支援の対象となる。そうした中、薬物依存など対象者が抱える問題は多様化・複雑化し、保護司の負担が大きくなっているとされる。面会は家庭の温かみを伝えて更生を図るために自宅で行うのがいいといわれるが、それに不安や抵抗を感じる人も増えているという。

 更生保護と再犯防止に保護司が果たす役割は大きい。しかし今のようにボランティアの善意に頼ってばかりでは、新たな人材を確保して制度を安定的に維持していくのは難しいだろう。報酬の導入はもとより、踏み込んだ活動環境の整備を急がなければならない。

 法務省によると、1月末時点で保護司は特例で再任した70代後半の1300人余りを除き、全国に4万5654人。保護司法で定められた定員の5万2500人を下回り、60歳以上がほぼ8割を占める。近年は年に3千人前後が退任し、新任の委嘱者数を上回る状態が続いているという。

 経験年数6年以内の早期退任について調べたところ、約6割が「対象者との面接の経験が少ないことに不安」を、4割程度は「1人で対象者と面接することに不安」を理由に挙げた。このため対象者1人につき複数の保護司を配置する仕組みも取り入れたが、保護司の間で「経験豊富な保護司に学ぶ場になる」「対象者はどの保護司が主担当か混乱する」と賛否が分かれ、現場には浸透していない。

 対象者と面会する場所に悩む保護司も多く、約7割はファミリーレストランなど自宅以外で面会することがあるとしている。国は保護司の活動拠点となる更生保護サポートセンターの設置を各地で進めているが、自宅から遠い、夜間や休日に使えないといった理由で利用は広がっていない。

 また都市部にある保護司会の会長のうち、9割が候補者に保護司になってくれるよう依頼して断られた経験があるとの調査結果もある。「忙しい」や「家族の理解が得られない」「罪を犯した人の来訪が負担」などの返答が多かったという。

 企業が定年を延長したり、地域の結びつきが薄れたりしたことの影響も大きいとみられ、保護司の活動を取り巻く環境はかなり厳しい。国は都道府県や市町村と協力して現役世代も含めて幅広く人材を求め、育成に本腰を入れる必要がある。

 総務省行政評価局が法務省に保護司確保に取り組むよう勧告したのは2年以上も前のことだ。出遅れた感はあるが、あらゆる面で保護司を支えられるよう制度の基礎をしっかり固めるべきだ。