里親のこと、アットホームな雰囲気で話そう-。松江地区里親会(柏木直人会長)は、生まれた家庭で生活できない子どもの養育に関心がある人を対象に、少人数での交流会「ミニおはなし会」を開いている。参加を機に、里親になる準備を始める人もいるという。松江市内で開かれた会をのぞいてみた。 (山口春絵)
松江、安来両市と島根県隠岐郡の里親でつくる松江地区里親会には2023年4月末時点で39世帯、66人が所属し、会員同士の交流や啓発活動に取り組む。
14年2月から交流会「里親さんとのおはなし会」を年1回開くとともに、参加者が発言しやすいよう、定員を10人ほどに絞った「ミニおはなし会」を21年12月から2~3カ月に1回開催している。この日は会員や児童相談所職員を含む8人が輪になった。
初参加したのは松江市西津田4丁目の原啓子さん(51)と市内の40代女性。夫の転勤で栃木県から4月に転居してきた原さんは助産師として、貧困や暴力などさまざまな事情で孤立した妊婦を支援するNPO法人の相談員を務めている。「経験を生かし、里親になるための勉強をしたい」と足を運んだ。
もう1人の女性は学生時代に児童養護施設を訪れた経験や、不妊治療に通った病院のポスターで里親に関心を持ったという。「施設には愛情を欲している子が多く、ずっと心に残っていた。自分に何かできることはないか」と参加した。
2人は質疑応答で積極的に発言した。里親になったいきさつを問われた副会長の宇都宮鏡子さん(65)は、子どもを授からず、親戚を介して里親制度を知ったとし、1993年の里親登録から7年後に5歳の男の子を預かり、20歳で養子縁組した経験を伝えた。
「里親と里子の名字が違い、学校生活で困ったことはないか」との質問には、宇都宮さんが「保護者会に必ず顔を出して『名字は違うけど、よろしくお願いします』と顔をつないだ」と助言。別の里親経験者も「病院では本名ではなく、里親と同じ通称で呼ぶようお願いした」と答えた。
話が弾んで予定した1時間を超えても、困ったときの相談相手や仕事との両立など具体的な質問が続いた。柏木会長(75)は「何度か参加し、一歩を踏み出した人もいる。これからも続けたい」と話した。
次回は7月8日午前10時から、安来市安来町の安来中央交流センターである。問い合わせは松江地区里親会事務局(島根県中央児童相談所内)、電話0852(21)3168。
里親制度 児童福祉法に基づき、離別や死別などさまざまな理由で実親と暮らせない、原則18歳未満の子どもを養育する。里子を家庭に受け入れるには研修を受け、里親に認定・登録される必要がある。島根県内では2021年度3月末時点で146世帯(247人)が里親登録し、26世帯で26人の里子が暮らす。