でき上がった絵を見せ合う部員=出雲市湖陵町三部、湖陵中学校
でき上がった絵を見せ合う部員=出雲市湖陵町三部、湖陵中学校

 五輪陸上100メートルで日本人唯一の決勝進出者、「暁の超特急」と呼ばれた吉岡隆徳(1909~84年)の紙芝居を、出身地の出雲市湖陵町の中学生が作っている。制作を通じて感じた古里の先達の魅力を広く伝えたいと願う。 (松本直也)

 紙芝居を作っているのは出雲市立湖陵中学校の美術部員20人。同町板津の元教員三原健史さん(84)が東京五輪を前に、吉岡の業績をあらためて知ってもらおうと提案した。

 1932年のロサンゼルス五輪男子100メートル決勝の場面や、俊足だった幼少期に「天狗(てんぐ)か馬か」と周囲から言われたことなどを盛り込んだ。部員は、三原さんが作った話を読み込んでイメージを膨らませ、15枚の絵にまとめた。

 保存が利き、発色するステンシル版画で制作。ふくらはぎに線を入れて筋肉質の体を表現し、校庭を走るシーンは、砂ぼこりが上がる様子を表すなど、工夫を重ねた。

 2年の浜村ひかり副部長(13)は「地元にいて誇りに思う。他県の人にも自慢できる」と吉岡の魅力を感じ取ったという。既に絵は出来上がっており、6月中にあらすじを絵の裏面に書いて完成させる。全校生徒に発表するほか、小学校やコミュニティセンターへの貸し出しも検討している。

 3年の秦悠輔部長(14)は「紙芝居を通じて吉岡さんの偉大さ、すごさ、島根出身ということを知ってほしい」と願い、三原さんも「分かりやすく表現されて生徒たちに感謝したい」と、吉岡の功績にあらためてスポットが当たるよう望んだ。