22カ国の主要チャートで初登場1位を獲得した英テクノユニット、プロディジーのサードアルバム「ザ・ファット・オブ・ザ・ランド」(1997年)は、極彩色のシオマネキがはさみを振り上げて扇動するジャケット。当時の「怒れる若者のアンセム」の最新型で、世界を席巻した。

冒頭の「スマック・マイ・ビッチ・アップ」はテクノとロックから人間を高揚させる成分を抽出し再構築したような音。夜の街を徘徊(はいかい)する主人公を一人称視点カメラで追ったミュージックビデオも秀逸で、学生だった当時影響され、画面に映るナイキのコルテッツらしきスニーカーを友人と連れだって買いに行ったことを思い出す。

セカンドアルバム「ミュージック・フォー・ザ・ジルテッド・ジェネレーション」(94年)を含め、ドラム演奏のフレーズをサンプリングするブレイクビーツが強烈。アドレナリンがあふれ出る曲ばかりだった。
計算され尽くした電子音の洪水に血肉を通わせていたのは、キース・フリントら3人のパフォーマー。頭頂部をそり上げた緑色の逆モヒカン、深いアイシャドー、鼻ピアス姿で客をあおるライブ映像が懐かしい。キースが亡くなって数年たつが、今も色あせない。(銭)