島根県海士町に「島留学」する高校生2人が、太陽光発電の事業化に取り組んでいる。ゼミの授業の一環で始め、地元企業の協力を受けて実現まであと一歩。「高校生実業家」の熱意に迫った。
(Sデジ編集部・鹿島波子)
▽資金集めで45万円確保
高校生は、隠岐島前高校(海士町福井)2年の田中宏海さん(16)=新潟県妙高市出身=と、南本夏江さん(16)=奈良県広陵町出身。地域課題解決のカリキュラムがある地域共創科で学ぶ。
事業化のきっかけは昨年9月、エネルギーをテーマにしたゼミの授業だった。海士町内の公共施設6カ所で太陽光の売電事業を手掛ける「交交(こもごも)」(海士町海士)の共同代表で、学校経営補佐官でもある大野佳祐さん(43)が講義し、電力の自給自足について学んだ。学校では電気代が年間約310万円かかり、太陽光で賄えば、地域にお金の循環も生まれると説明があった。「生徒がやってくれたら一番面白いんだけどな」という言葉に、南本さんは、隣席の田中さんに「できそうじゃない?」と声をかけた。田中さんも「俺も思っていた」とすぐ呼応した。
元々、将来的に起業を思い描いていた田中さん。南本さんは興味程度だったが、講義を聞くうちにイメージが広がり、この授業を境に2人は意気投合。やるなら会社を立ち上げようと、「あまてらすプロジェクト」と銘打ち、まず設置に必要な資金集めに動いた。2人で探して見つけた、創作支援活動サイト「note(ノート)」(東京都)のクリエイターサポートプログラムに応募すると、なんと1200件の応募から支援する11組に選ばれ、活動資金45万円を確保。幸先の良いスタートで早速、設置準備に必要な撮影用のドローンの購入に充てた。

▽社内ベンチャーとして県教委へ「出張」
意気揚々と事業ノウハウを聞きに「交交」の大野さんに相談。資金調達や事業の継続性から、すぐの起業はなだめられたが、代わりに「社内ベンチャー」での取り組みを提案された。2人が社員になり、同社の一事業部として活動するという案だ。2人は業者選定や資金面の不安もあり「めちゃくちゃ助かります」と快諾した。
考えたらすぐに行動に移すのが2人。交交の中に、新事業部「あまてらす事業部」を立ち上げ、始動した。ゼミでも学校での太陽光発電を議題にし、▽どこに何枚貼るか▽日光が当たる角度はどのくらいか▽太陽光以外の可能性は-など班に分かれて考えた。最も大事な設置場所は議論の末、「校舎の屋上」が最初の候補に挙がったが、防水シートが張ってあるために、学校から「難しい」と言われ、...