1958年のビルボード・トップ100のうち、今回は30位から21位まで。

30位「トプシー1/トプシー2」(演奏)コージー・コール
 ジャズドラマー、コージー・コールが楽団を率いて演奏したインストナンバー。アレンジを変えて、同じ曲をレコードのA面とB面に配したが、よりヒットしたのはB面のパート2だった。A面のトプシー1(パート1)は、まさにスタンダードなアレンジで、特徴的なテーマを管楽器が一斉に奏でてコールのドラムソロへとつなぎ、さらにクラリネット、サックス、トランペットなどのソロプレイが色を添え、ラストで最高潮に盛り上がってエンディングとなる。トプシー2(パート2)はラテンフレーバーなアレンジ。カウ・ベル(ではないかと思う)を、わざと一瞬遅らせるというか焦らすようなタイミングでたたいて、延々と繰り返すというのを聞くとラテンのルーツはアフリカであることを思い出させる。また、パート2はオルガンがフィーチャーされ、A面とは似て非なる奏法のドラムへと引き継がれる。ラストはパート1のエンディング直前のフレーズを使って管楽器が盛り上げ、ドラムとの掛け合いのもと大円団を迎えるという構成。ワクワク感というか、ノリの良さを感じるのはB面のパート2の方だろうか。

29位「スイート・リトル・シックスティーン」(歌)チャック・ベリー
 ユニークな演奏スタイル、ダックウオークで名の知られるチャック・ベリーがピークで2位をゲットしたロックンロールナンバー。彼はこのほか「ジョニー・B・グッド」「ロックンロール・ミュージック」などを同じ58年にヒットさせたロックンロールの始祖。

28位「トム・ドゥーリー」(歌)キングストン・トリオ
 後にフォークグループとして大成功を収めることになるキングストン・トリオの2枚目のシングル、かつ初めてのヒットがこの曲。ノホホンとした曲調に聞こえるが、絞首刑になろうとしている男、トム・ドゥーリーのことを歌った、かなり厳しい内容。ドム・ドゥーリーは実在した人物で、愛人を殺した罪に問われ、歌われているとおり絞首刑になったとか。実は冤罪(えんざい)だったなどと言われているそうだが、それにしても古くから伝わるフォークソングをリメークして世に出そうなどという発想が、いかにも米国らしい。

27位「シュガータイム」(歌)マクガイア・シスターズ
 イントロが♪コトコトコットン コトコトコットン ファミレドシドレミファ♪でなじみのある「森の水車」(こちらの方が古い)と似ているところがあるものの、カントリー調にアレンジされた陽気なポピュラーソング。女性3人のコーラスのみならず、意表を突いて男性コーラスが参加してくるし、陽気なバンジョーも曲を盛り上げている。女性コーラスグループは活動期間が比較的短い傾向があるが、マクガイア・シスターズは15年以上続いたグループで、ヒットチャートにはコンスタントに登場していた。55年には「シンシアリー」がピークで1位、年間では8位にチャートイン。その後、この「シュガータイム」で久しぶりにピーク1位にカムバックした。

26位「ジャスト・ア・ドリーム」(歌)ジミー・クラントン
 ピークで4位だったものの、R&B部門では白人であるにもかかわらず1位に輝いた。ジミー・クラントンはルイジアナ州出身のロックンロールシンガー。ルイジアナ州といえば、言わずと知れたニューオーリンズが存在するところ。ニューオーリンズと言えばデキシーランドジャズ。そしてデキシーランドジャズと言えば葬儀のパレード(ジャズ葬)2列目のブラス隊が演奏するセカンドラインが有名。こういう環境の中で育ったジミー・クラントンだからこそR&B部門で1位になることができたのかも。ちなみに62年にクラントンが歌ってチャートインした「あの曲」は、日本の松田聖子さんが絶頂期に歌って大ヒットした「例の曲」の元ネタと巷間(こうかん)言われているが、その話題はいずれまた62年のコーナーで。

25位「ア・ワンダフル・タイム・アップ・ゼア」(歌)パット・ブーン
 オーソドックスなポピュラーシンガーのパット・ブーンが、意欲的にR&Bに取り組んだのがこの曲。バックのビリー・ボーン楽団の演奏と相まってブーンのボーカルは彼らしい端正なものだが、オリジナルは40年代にリリースされたゴスペルソング。別名「ゴスペル・ブギ」と言われるだけあって、そのオリジナルはどちらかというとブギウギっぽい。ちなみにこの曲は47年にリリースされたが、くしくも同じ年にわが国では、笠置シズ子さんの「東京ブギウギ」が大ヒットした。

24位「「プア・リトル・フール」(歌)リッキー・ネルソン
 後にカントリーに傾倒していくネルソンだが、この時代はロックンロールシンガーとして知られていた。この曲もR&Bの影響を強く受けているが、エルヴィス・プレスリーのコーラスを担っていたゴスペルグループ、ジョーダネアーズがバックコーラスを務めている。

23位「ロッキン・ロビン」(歌)ボビー・デイ
 この曲も年に1度くらいはどこかから流れてきて耳に入ってくるR&Bナンバー。いきなり流れてくるコーラスのイントロ、♪トゥィドゥ リィディディ♪は今聞いてもインパクト大。B面の「オーヴァー・アンド・オーヴァー」もヒットし、後に英国のデイブ・クラーク・ファイブが取り上げて65年にピークで6位にランクされた。

22位「ウェア・マイ・リング・アラウンド・ユア・ネック」(歌)エルヴィス・プレスリー
 惜しくも最高で2位だったプレスリーのロカビリーナンバー。ただし、カントリー部門最高3位、R&B部門で1位というのはさすが。アレンジの具合によっては、ロックンロール、R&B、そしてカントリーにも聞こえてくるご機嫌なナンバー。バックコーラスはリッキー・ネルソンの項で紹介したジョーダネアーズ。エンディングでドラムのスネアとハイハットに若干のズレがあるのはご愛嬌(あいきょう)か。

21位「ヤケティ・ヤック」(歌)コースターズ
 当時のナンバーワン・ヒットメーカーと言っても過言ではないジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの作で、ヒットチャートの常連コースターズが歌った曲。「ヤケティ・ヤック」とは、騒々しい会話のことを言うのだそうだが、最近の若い人が使う「うっせぇわ」に近いものがある…という解釈をする人もいるらしい。この曲も聞きようによってはR&Bにもロックンロールにも聞こえてくる。サックスを吹いているのは、かのキング・カーティスで、この演奏以来「ヤケティ・サックス」と呼ばれるようになった。

 (オールディーズK)