将棋の第32期女流王位戦5番勝負の第3局が2日、福岡県飯塚市の旧伊藤伝右衛門邸であった。出雲市出身の里見香奈女流王位(29)が、挑戦者の山根ことみ女流二段(23)を150手で破り3連勝で防衛し、女流通算タイトル数で史上最多の44期を達成した。2009年に清水市代女流七段(52)が女流王位戦で達成した43期の記録を、12年ぶりに塗り替えた。(佐貫公哉)
これで女流王位は7期目となり、清麗、女流名人、倉敷藤花と合わせて四冠を維持した。
後手の里見女流王位が3筋に飛車を振ると、先手の山根女流二段は8筋に飛車を振り、1、2局と同様に相振り飛車の戦型となった。
中盤は激戦模様。スピード重視で相手玉に迫る里見女流王位に対し、山根女流二段は強気の指し回しで一時は優勢に立った。終盤、里見女流王位は角や竜の大駒の動きを生かして主導権を取り返し、相手の猛追を的確に封じた。
里見女流王位は今年2月に女流名人戦を防衛。プロ入りから16年4カ月でタイトル最多タイの通算43期に届いた。タイトル数が少ない時代だったとはいえ、清水女流七段の24年7カ月を大幅に上回るハイペースで到達した。通算タイトル数の歴代3位は、中井広恵女流六段(51)の19期となっている。
男性棋戦の最多タイトル獲得は、羽生善治九段(50)の通算99期。
「すごく光栄 人間性も成長したい」
里見香奈女流王位の話 (女流通算タイトル数44期は)すごく光栄。清水市代女流七段が持たれているタイトル数43期は棋戦の数が(今より少ない中での樹立で)比較にならない。今シリーズは、通して見ると良い局面で危うさが出たとも感じている。尊敬する清水さんのように人間性の部分で成長したい。
<略歴>さとみ・かな 出雲市出身。12歳でプロ入りし、大社高校在学中の2008年、16歳で初の女流タイトルとなる倉敷藤花を獲得。19年には初代清麗となり、史上初の女流六冠を達成した。現在は女流王位のほか清麗、女流名人、倉敷藤花を保持する。
「県民に喜びと感動」
丸山達也島根県知事の話 タイトル獲得通算記録歴代単独1位の偉業は長年にわたる鍛錬のたまものであり、県民に大きな喜びと深い感動を与えてくれた。今後も巧みな駒運びと「出雲のイナズマ」と称される鋭い攻めを武器に活躍することを期待している。