女流将棋界の第一人者、里見香奈女流王位がタイトル最多の通算44期を獲得した。20代での新記録樹立は、切れ味鋭いずばぬけた終盤力があってのことといえる。今後、その数をどこまで伸ばしていくのか。

 「強くなりたい」。その向上心が原動力となってきた。女性では誰も成し得ていない棋士の資格獲得にチャレンジしたことがある。女流プロとは別制度の「棋士」になるには、難関の奨励会突破が条件だった。だが当時は、女流プロと奨励会のかけ持ちは許されていなかった。

 里見女流王位は、奨励会入りを日本将棋連盟会長だった故米長邦雄永世棋聖に直訴した。女流名人など複数のタイトルを保持し、トップへ躍り出た頃だった。その情熱が米長永世棋聖を突き動かし、〝兼業〟が認められた。2011年、奨励会1級の編入試験に合格。女性で初めて最高位の三段まで昇ったが、18年に年齢制限のため無念の退会となった。

 奨励会は過酷で厳しい世界。夢はかなわなかった。だが、そこで培った終盤のぎりぎりの勝負術は女流棋戦でも大きなプラスになっている。

 一方で、強力なライバルが現れた。4月に奨励会三段を辞めて、女流プロに転向した西山朋佳女流三冠(25)だ。これまで奨励会員だったため出場可能な女流棋戦は限られていたが、既に3タイトルを持つ。今後は全てに参加でき、2人の対戦が増えて好勝負が期待できる。切磋琢磨(せっさたくま)することで、互いを高め合っていくことだろう。

 

■女流棋界けん引期待

 日本将棋連盟・佐藤康光会長の話 女流通算タイトル数最多記録更新、おめでとうございます。20代の若さで達成されたことにすごみを感じます。これからも女流棋界をけん引し、ますますのご活躍を祈念いたします。