今からちょうど30年前の1993年8月5日。直近の衆院選で敗北した影響で宮沢喜一内閣が総辞職を決め、55年から38年間続いた自民党政権が事実上終わった。同日召集された特別国会に登院した山陰両県選出の衆院議員9人のうち、鳥取の野坂浩賢氏と島根の錦織淳、石橋大吉両氏の3人の非自民議員がいた▼自民が与党に復帰した96年衆院選は、同じ都道府県内で地域を分けた選挙区ごとに1人を選ぶ小選挙区制が導入された。2021年まで25年間で9回あった選挙のうち、山陰で自民公認候補に勝利したのは03年鳥取2区の川上義博氏ただ1人。20年以上も続く公明党の支援もあり「自民1強」の状態が続く▼自民への根強い支持は選挙結果が物語る。だが憲法改正や安全保障など、異なる価値感がせめぎ合う重要案件を抱える今、動向が注目されるのは野党だ▼有権者が野党を見放しているわけではない。直近の国政選挙の22年参院選比例区で、与党である自民、公明両党の得票率は約46%にとどまる▼一口に野党と言っても、政党ごとの考え方の格差は広がる一方だ。小選挙区制の導入時から志向してきた「政権を担うことができる二大政党」は、よほどのリーダーが出現しない限り、実現が難しい。多様な意見が国会の議席として確実に反映される選挙制度への変更を視野に、野党は国会で今年始まった選挙制度の検証で問題提起してほしい。(万)