農業分野の専門用語に〝条件不利地域〟という単語がある。これは、地形、立地、気候、交通などの条件が農業にとって不利な地域を指すもので、中山間地や離島などが該当する。農林水産省ではこのような地域での営農に対する補助金などの支援策を設けている。

 近年、農業・農村を取り巻く環境が急変する中、新たなタイプの〝条件不利〟が生じている。代表例が通信環境だ。政府は農業活性化の実現に向けて自動運転農機、ドローン、農業ロボット、営農管理アプリなどをはじめとするスマート農業技術の導入を推進している。しかし、農地によっては高速通信が使えないケースがあり、そもそも携帯電話の電波自体が入らないことも珍しくない。これではもうかる農業の切り札的存在であるスマート農業技術を有効活用することが困難となり、地域の農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の大きな足かせとなってしまう。

 携帯電話の基地局設置や光ファイバー網の整備は通信会社の事業範囲ではあるが、人口密度が極端に低く採算が取れない農地においては、...