島根県庁周辺のモダニズム建築群。手前が県庁で、右奥が県立図書館、左奥が県立武道館=松江市殿町(ドローン撮影)
島根県庁周辺のモダニズム建築群。手前が県庁で、右奥が県立図書館、左奥が県立武道館=松江市殿町(ドローン撮影)
島根県立図書館(ドローン撮影)
島根県立図書館(ドローン撮影)
島根県民会館(ドローン撮影)
島根県民会館(ドローン撮影)
旧島根県立博物館(ドローン撮影)
旧島根県立博物館(ドローン撮影)
島根県庁周辺のモダニズム建築群。手前が県庁で、右奥が県立図書館、左奥が県立武道館=松江市殿町(ドローン撮影)
島根県立図書館(ドローン撮影)
島根県民会館(ドローン撮影)
旧島根県立博物館(ドローン撮影)

 建築関係者が「奇跡的」と称賛するほど、島根県庁周辺にはモダニズム建築が集中している。老朽化により全国各地の名建築が次々と姿を消す中「建築の聖地」として松江の存在感がより高まる。県は完成の背景や文化的価値を発信しようとスタンプラリーなどを仕掛け、PRに力を入れている。 (白築昂)

 

 モダニズム建築は機能性を重視し、シンプルで直線的な設計が特徴。県庁周辺の建築群の中心は、島根県邑南町出身の建築家・安田臣氏(1911~77年)と、世界的建築家・菊竹清訓氏(28~2011年)が設計した県庁、県立図書館、旧県立博物館(県庁第3分庁舎)、田部美術館、県立武道館、県民会館、県立美術館の七つの建物。このうち五つが国の「有形文化財建造物」だ。

 この風景は1958~70年にわたる「島根県庁周辺整備計画」によって生まれた。58年完成の旧県立博物館と59年完成の県庁舎を軸として、当時県知事だった第23代・田部長右衛門氏が主導した。

 戦後の高度成長期と呼応し、地方で数多く建設されたモダニズム建築はいま岐路に立つ。世界的に知られる有名建築家が多く手掛け文化的な価値が高いものの、築60年以上が経過して老朽化は深刻に。公共施設は自治体側の財政事情が厳しく、利活用の妙案が見いだせないまま解体が進む。

 丹下健三氏(1913~2005年)が設計し、屋根の両端がカーブを描く「船の体育館」として知られる旧香川県立体育館(1964年完成)は老朽化が進み、耐震強度も不足。香川県は今年2月に解体を決めたが、地元の建築士らが撤回を求める署名を集めるなど議論を巻き起こした。

 島根県庁周辺に点在する建物を巡っても、80年代後半に建て替えを含めた再編成計画が持ち上がったことがある。県総務部営繕課の井上翔太主任=1級建築士=は「さまざまな理由があり結果的に実現しなかったことで、貴重な建築群が奇跡的に残り、希少性が高まった。魅力や価値を県内外に向けてさらに発信していく」と力を込める。七つの建物を巡るスタンプラリーは台紙を追加するなど好評という。

 

▼島根県庁周辺建築群ドローン撮影

 島根県庁周辺のモダニズム建築群を一目見ようと、全国から建築ファンや行政関係者が足を運ぶ。魅力を探るため、山陰中央新報社はドローンを使い、上空からの撮影を試みた。通常、眺めることができない高さや角度から各建物に迫ることで、菊竹清訓氏、安田臣氏が心血を注ぎ生み出した名建築の新たな魅力が浮かび上がる。