障害や特性のある子どもたちが気兼ねなく遊べる場をつくる取り組みが、島根県立大松江キャンパス(松江市浜乃木7丁目)で始まった。アート体験活動「けんだい ふるーる」で、7月下旬にあった初回には4歳から小学4年生までの4人が魚釣りゲームに声を弾ませた。
参加した子どもたちは学生のサポートを受けながら、魚の形に切った画用紙に色とりどりの丸いシールを貼った。続いて、海に見立てて広げたブルーシートに魚を並べ、船や島を模した踏み台に立ち、次々に釣り上げると「やったー。釣れた」「楽しい!」と、はしゃいだ。
別室では母親たちがわが子の趣味や特技を紹介し、長所を探すワークショップがあった。工事車両をじっと眺めるのが好きな息子にいつも付き添っているという母親を、他の参加者が「すごい」とたたえるなど、日頃の努力を認め合った。発達の心配を相談する場面もあった。
知的障害のある子を育てる松江市内の女性(46)は「学生が付いてくれて安心して遊べた」と喜び、娘と参加した県東部の女性(29)は「伸び伸び遊んでいてよかった。また参加したい」と笑顔だった。
コミュニケーションが苦手だったり、聴覚や視覚が敏感な「感覚過敏」があったりする子どもは、外出先の選択肢が限られる。障害に対する周囲の理解不足から、公園など公共の場を利用しにくいケースもある。
そうした事情のある子どもたちのために人間文化学部保育教育学科の水内豊和准教授(47)=臨床発達心理学=と、保育士や幼稚園教諭、特別支援学校教諭などを目指す同学科の1年生有志が企画した。
学生にとっては学びの場になった。1年の安藤楓美(ふみ)さん(18)は「障害のある子への接し方が分からなかったが、シールの見せ方を工夫したら、自分で貼ってくれた。打ち解けてくれてうれしかった」と振り返った。
他の親子や学生との一体感の中で遊ぶ経験は、家族で出かけるだけでは得難く、保護者同士の交流は、わが子の長所や成長を客観視し、自分の頑張りを認める機会になるという。水内准教授は「『良いところ探し』の名人になってほしい」と参加を呼びかける。
次回は9月23日午前10時~正午。大学周辺を散策して拾った落ち葉やドングリで工作する。12月23日、来年1月20日、同3月23日もある。無料。問い合わせは水内准教授、メールcdplab2023shimane@gmail.com
(山口春絵)