島根県内で4日間のロケが行われ、SNSでも放送の度に大きな反響があるTBS系日曜劇場「VIVANT」(毎週日曜午後9時)。ロケ地になった松江市玉湯町では13日に、パブリックビューイングが行われた。地元で撮影されたシーンも登場し、集まった住民らは「ワクワクした」とテレビ画面に釘付けになった。人口約7300人の町が沸いた夜を振り返る。
(Sデジ編集部・鹿島波子)
【写真特集】
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▽夜9時に公民館集合
放映が始まる午後9時を前に、8時45分頃から、玉湯町湯町の玉湯公民館に地元住民が集まり始めた。ロケ地に使われたのは、玉湯町大谷の旧大谷小学校の校舎と学校図書館。老若男女35人が集まり「どれくらい出るだーか」と期待を込めながら、大型テレビを前で半円に座った。

玉湯公民館に貼り出されたドラマ「VIVANT」と鑑賞を呼び掛けるチラシ=8月13日、松江市玉湯町湯町
開始15分が過ぎ、主人公・乃木憂助の父の出身が島根県奥出雲町と分かると、見入る住民もぐっと集中。島根県という地名が出たのはドラマで初めてだ。30分を超え、先に松江市立本庄小学校(松江市邑生町)の撮影シーンが出ると、画面を指さす住民の姿も。「今か今か」とテレビにくぎ付けになっていると、待ち望んだ瞬間は直後に訪れた。
実際に使われた旧大谷小でのロケシーンは全部で3分。主人公のルーツに迫るシーンで、放送の時間帯は、携帯でテレビ画面を写真に撮って記念に収める人もいた。この日の放送では、島根県庁(松江市殿町)や櫻井家住宅(島根県奥出雲町上阿井)など島根でのロケシーンが次々と映され、集まった参加者はテレビ前から離れず、全てを堪能していた。

「VIVANT」島根ロケに迫る
ドラマ「VIVANT」乃木家と奥出雲町の櫻井家 つながりと島根ロケの裏側(Sデジオリジナル記事)
▽さみしい気持ちも喜びに
ロケに関わった人も訪れていた。玉湯公民館で週3回喫茶を開く「玉つばき」(60~80代、18人)のメンバーの1人、岩田多江子さん(79)は、ロケ当日にスタッフにコーヒーを提供。撮影自体を見ることはできなかったが「(テレビを)興味深く見ました」とうれしそうに感想を話した。

ロケでは「福澤(克雄)監督が来て気さくに声を掛けてくださったり、阿部(寛)さんも写真を写してもらったりして、楽しみながら、地域を挙げて喜んでおもてなしした」と振り返った。岩田さんの出身は奥出雲町で、福澤監督と奥出雲町とのつながりも知っており「監督が『毎週楽しみにワクワクして待っていてほしい』と話しておられた通りにどんどん楽しみになっている。周りの方も『面白くなってきた』と話す人が増えていて、広がってきた」と興奮覚めやらぬ様子だった。
地元の大谷自治会の山本祥宏会長(68)はロケ当日、しじみ汁やしじみご飯、出雲そばなど、地元の料理100人分を手配。「最初は(ロケの対応は)初めてのことで雲をつかむような感じだったが、『おいしい』とおかわりもしてもらえてうれしかった」と振り返った。

開校から140年の歴史を刻み、2021年3月に閉校した旧大谷小学校がロケ地として使われたことは、山本さんにとって特別な感慨があった。「大谷小は地元のシンボル。閉校になってさみしい気持ちだったが、知っていただく機会になり、地元も喜んだ。また今後も違う場面で使っていただきたい」としみじみと話した。
この日もドラマを食い入るように見つめ「撮影時はどうつながるのか分からなかったが、放送を見てよく分かり、すごく楽しみになってきた」とこの先も毎回見るつもりだ。同時に、90年近く経つ木造校舎への愛着も増し「末永く使っていきたい」と誓っていた。
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木造校舎の1階部分は90年近く経ち、今も地元のシンボルとして使われる旧大谷小学校=8月、松江市玉湯町大谷