1970年に西郷中学校に統合されて廃校となった島根県隠岐の島町東郷の東郷中学校校歌が、半世紀ぶりに復活した。卒業生で統合時に在籍していた、さいたま市緑区の峯坂恒幸さん(67)が同級生や元同僚の協力で演奏と合唱をCDに収めた。峯坂さんは「卒業生は校歌に愛着と誇りを持っているはず」と話し、復活した校歌を聴いてほしいと願っている。
東郷中学は当時の東郷村が新制中学として1947年に設置。生徒数は100~150人で推移し、70年に廃校になった。20年余りという短い歴史の中で計1058人が卒業している。
峯坂さんは、埼玉県内の中学教諭として勤務していた頃、行事の度に歌われる校歌の大切さを肌身で感じていた。時になくなってしまった母校を思い出して「校歌が歌えるといいのに」と感じていた。先輩の卒業生たちがテレホンカードに校歌の歌詞を記載しており、同じ思いをしている卒業生は多いと察した。
同級生の記憶などをつなぎ合わせて約20年前に全ての歌詞は把握できたが、旋律を再現できずに時が過ぎていった。今年5月に町図書館に電話したところ、職員が71年に発行された「島後小中学校校歌集」の中に楽譜があるのを発見した。校歌集は、当時の教諭たちが、校歌を後世に残すべきだとして冊子にしていた。
教員時代の同僚がいる埼玉県の川口市立仲町中学校吹奏楽部に合唱と伴奏を依頼して、録音データをCDに記録した。詩は海士町出身で三波春夫の「東京五輪音頭」で知られる作詞家の宮田隆(1913~82年)が手がけ、学校周辺の情景を的確に表現していたことも判明した。
音源を受け取った峯坂さんは「子どもたちの声で聞きたかった。懐かしい。感無量です」と語った。年賀状のやりとりをする町内の友人3人にまずはCDを送り、次に帰省する機会に多くの卒業生に聴かせたいとしている。
(鎌田剛)