水田に面した緩やかなのり面をラジコン式草刈り機が進んでいく。水田の水量は監視センサーでデータ管理。少なくなればスマートフォンを操作して自動的に給水する。肥料をまくのは農業用ドローンだ。「農業は重労働」という印象が覆された▼大田市三瓶町野城地区にある農事組合法人「百姓天国」の活動を視察した。レンゲをすきこんで栽培する「れんげ米」や有機栽培米など、自然と共生した農業を推進。地域の廃校舎を加工施設にして、餅やいちご大福、生芋こんにゃくなど加工品の製造販売も手がける▼立ち上げから20年。農林水産省の交付金を有効活用し、積極的に省力化を進めるのには訳がある。「地域の皆が笑顔で元気。そして若者が帰ってきたくなる場所にしたかった」と三島賢三代表理事(72)▼男性16人で始めた組合員数は、28歳から76歳までの31人に。うち10人いる女性は主に加工品を担当。全体の売り上げの4分の1を占めるほど成長した。「最初は有機栽培なんてできないと思っていた。今では有機をもっとPRし海外輸出できないかと考えている」。メンバーの夢は広がる▼商標登録も行った法人名は「楽しく農業をしよう」という意図で付けられた。地方では「田舎はつまらんから都会へ出て行け」とわが子に話す親も多い。一方で、親が夢を語りながら楽しく働いていれば、「地元に帰ろう」と思う若者も出てくるはずだ。(健)