陸上布勢スプリントの男子100㍍決勝で、9秒95の日本新をマークした山県亮太(中央)=6日、鳥取市のヤマタスポーツパーク陸上競技場(代表撮影)
陸上布勢スプリントの男子100㍍決勝で、9秒95の日本新をマークした山県亮太(中央)=6日、鳥取市のヤマタスポーツパーク陸上競技場(代表撮影)

 陸上の布勢スプリントは6日、鳥取市のヤマタスポーツパーク陸上競技場で行われ、男子100メートル決勝で山県亮太(セイコー)が追い風2・0メートルの条件下、9秒95の日本新記録を樹立して優勝した。サニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)の記録を0秒02縮めた。多田修平(住友電工)が10秒01で2位。2人は東京五輪参加標準記録(10秒05)を突破した。この種目の日本勢の参加標準記録の突破者は5人となった。

 小池祐貴(住友電工)が10秒13で3位、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)は10秒28で6位。追い風2・6メートルの予選で10秒01だった桐生祥秀(日本生命)は決勝を棄権した。

 女子100メートル障害は青木益未(七十七銀行)が追い風1・8メートルの条件下、日本記録に並ぶ12秒87で優勝した。日本記録保持者の寺田明日香(ジャパンクリエイト)は12秒89で2位。

 女子100メートルは御家瀬緑(住友電工)が11秒57で勝ち、男子110メートル障害は金井大旺(ミズノ)が13秒40で制した。

 

■技術の完成度高めた走り

 速報タイムは日本タイ記録の「9秒97」だった。山県は右腕を上げ、両手をたたいた。歓喜の瞬間はまだ先だった。固唾(かたず)をのんで正式記録を待って約1分後、「9秒95」が表示されると会心の笑みが漏れた。「信じてトレーニングをしてきた。実を結んで良かった」。幾度もの屈辱を乗り越え、日本最速の座に達した感慨を言葉にこめた。

 追い風1・7メートルを受けた予選で10秒01をマークして東京五輪参加標準記録をクリアし「肩の荷が下りた」という。決勝を「世界の準決勝」と想定し、前半が得意な多田に中盤まで先行されたが、落ち着いていた。「ラストまで集中力を切らさず、自分のペースを崩さずにいけた」。差を分けたのは中盤の力強い加速。終盤に失速した多田を0秒06差で振り切った。

 過去2年は故障に悩み、競技続行に不安を覚えた時期もあった中、新たにコーチをつけたことが奏功した。股関節の動きを見直してけが防止の意識を高め、こだわっていたパワーよりも技術を重視。重心を前に置き、前半からスピードに乗る走りの完成度を高めた。

 運も味方した。決勝で吹いた追い風は記録が公認される上限の2・0メートル。「練習を頑張っていれば、運も味方してくれる」と口にしていた通り、好条件に恵まれた。

 日本勢は5人が五輪参加標準記録を突破。日本選手権で代表の3枠を争う。五輪の決勝という大きな目標へまだ道半ばだ。「簡単なレースにはならない。気を引き締めて絶対代表権を取る」と気合を入れた。