代表選が行われた国民民主党の臨時党大会で手を取り合う玉木雄一郎氏(左)と前原誠司氏=2日、東京・永田町
代表選が行われた国民民主党の臨時党大会で手を取り合う玉木雄一郎氏(左)と前原誠司氏=2日、東京・永田町

 国民のためになると信じる政策の実現を目指して、政府、与党と協力することはあってもいい。だが、野党である以上、行政監視の責務を怠らず、国会論戦を通じ正すべきは正していく姿勢が何より求められよう。

 国民民主党の代表選で、玉木雄一郎代表が前原誠司代表代行との一騎打ちを制し、再選された。党に所属する国会議員21人や次期衆院選の候補予定者、地方議員らに割り当てられた計111ポイントのうち80ポイントを獲得した。

 立憲民主党への合流組を除いて2020年に新たに結成された国民民主は玉木氏の下、「対決より解決」をスローガンに掲げてきた。今回の代表選でも玉木氏は「政策本位で与野党を超えて連携するのが党の方針だ」と強調、支持を呼びかけた。

 実際、22年度予算を巡っては、自民、公明両党との協議を通じ、重視した燃油価格の急騰対策で前進がみられたとして、賛成した。岸田文雄首相の政権運営全般を信任したとみなされる、野党としては異例の対応だった。

 23年度予算は防衛力強化のための増税を前提にしているとの理由で反対に回ったものの、異論が根強かった改正入管難民法などでは成立に向けて政権側と歩調を合わせた。一方で、同じ旧民主党の流れをくむ立民との共闘には、国会でも国政選挙でも距離を置いた。

 代表選では、前原氏が政権寄りとされる玉木氏の党運営の是非を争点に設定したが、玉木氏の大勝で、従来の路線が継続されることになる。

 ただ、玉木氏を推した国会議員には、連合傘下の産業別労働組合出身が目立ち、民間労組系の組織票に支えられたのは間違いない。代表選結果は、限られた投票権者の評価にとどまることを指摘しておきたい。

 最近の国政選挙で国民民主の比例代表得票数は、玉木氏がアピールする通り増加傾向にあるが、国会の勢力は「多弱」とやゆされる野党でも少数にとどまる。岸田政権には国会運営で与党の「補完勢力」と受け止められているのが実態ではないか。

 前原氏は「非自民・非共産」勢力の結集による政権交代を訴えた。これに対し玉木氏は「穏健な多党制による政権交代が現実的だ」と繰り返し、想定する政権の枠組みを明確にはしなかった。

 代表選後の記者会見では、自公連立政権への参加を否定したが、「今の時点で」と留保も付けた。岸田政権に期待を持たせ、政策面でさらなる譲歩を引き出す戦略の一環だとしても、政権側にも国民民主を取り込むことで野党の分断を図る意図があるのは明らかだろう。

 自民内で浮上している国民民主との連立論は、政権の維持、強化を目的とした野党への揺さぶりとみた方がいい。

 野党も現実的な政策立案や対案提示が求められるのは当然だ。玉木氏は「批判や反対だけでは政権を担えない」と言い、与党からも同様の発言を聞く。だが、そうした声が幅を利かすと、世論の賛否が割れる課題の国会質疑で腰が引け、多様な意見が反映されない政権運営を許すことになる。

 玉木氏は前述の会見で、野党の役割の第一に行政監視を挙げていた。ならばその機能を果たすため、まずは国会審議の充実を岸田政権に迫るべきだ。立民とも共闘できるはずで、野党の存在意義は国会でしか示せないと心してもらいたい。