投げ落とされたみこしを押し合う男衆=島根県奥出雲町下阿井、阿位八幡宮
投げ落とされたみこしを押し合う男衆=島根県奥出雲町下阿井、阿位八幡宮

 境内に投げ落とされたみこしを押し合う伝統の「押輿(おしこう)神事」が1日、島根県奥出雲町下阿井の阿位八幡宮であり、大勢の見物客が見守る中、かすりの着物姿の男衆約50人が2組に分かれ激しい争いを繰り広げた。

 五穀豊穣(ほうじょう)や家内安全を願い、約500年続くとされる神事。新型コロナウイルス禍の影響で、4年ぶりに男衆を集めての開催となった。

 境内に上地区と下地区に分かれた男衆が集結し、写真愛好家ら200人以上の見物客も戦いの開始を待ち構えた。みこしはケヤキ製で大きさ縦、横、高さ約90センチ、重さ約150キロあり、境内で最も高い場所から石段伝いに投げ落とされると一斉に取り囲んだ。

 「ヨォー、ヨォー」とかけ声が境内に響き、双方がみこしを自分たちの地区側に寄せるために力を振り絞った。神事を取り仕切る当屋頭が行方を見守り、10分後に男衆の上に乗って下地区の勝利を宣言した。

 獅子舞などで神事を締めくくり、当屋頭を務めた小川正志さん(63)は「人口減の中でも行事を残していきたい」と話した。 (鹿島波子)