1994年12月5日、ハンガリーを訪れたウクライナ大統領クチマは「ブダペスト覚書」に署名した。米ロ英はウクライナの主権と領土を尊重すると誓約し、安全保障を約束した。片やウクライナはソ連の残した核兵器を完全放棄し、核拡散防止条約(NPT)に加盟する決断を下した。

 だが覚書は法的拘束力を伴わない上、違反行為への具体的な対抗措置も明記されず欠陥を内包していた。今シリーズの総括として、ウクライナ出身の歴史家マリアナ・ブジェリンの言葉から「侵略の...