店頭に立ち、来店客を笑顔で出迎える森口祐太郎さん=島根県隠岐の島町西町、ベイクハウス ベンチ
店頭に立ち、来店客を笑顔で出迎える森口祐太郎さん=島根県隠岐の島町西町、ベイクハウス ベンチ

 島根県隠岐の島町に初めてドーナツ専門店がオープンし、連日品切れになるほどの盛況となっている。開いたのは同町出身の店主・森口祐太郎さん(37)。店が少なく、欲しい物が手に入らないのが嫌で島を出たが、都市部で修業を積んで「ないなら自分で作ろう」とUターン。近く店内を改装してハンバーガーも扱う予定で、町内初となるファストフード店にしようと意気込んでいる。(鎌田剛)

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 同町西町のドーナツ専門店「ベイクハウス ベンチ」は10月中旬にオープン。生地を24時間熟成させた膨らみのあるドーナツ約10種類を300~350円で販売する。連日、午前11時の開店と同時に次々と売れ、午後2時ごろには計200個が売り切れとなる。

 森口さんは「たまにしか食べられないファストフードへの憧れが強すぎた。隠岐になかったのが根っこにある」と紆余(うよ)曲折を経て開業した理由を語る。

 森口さんは高校卒業後、東京の服飾専門学校に進学。ファストフードへの憧れから、大手ピザチェーン店でアルバイトを始めた。卒業後は飲食業を志し、大阪府内で兄のラーメン店を2年ほど手伝った。東京で食べた本格ハンバーガーの味に衝撃を受け、24歳で都内の専門店に就職し、朝から晩まで働き続けた。

 休憩時間中、外のベンチで横になり、ふいに浮かんだのが隠岐で過ごした学生時代の記憶。当時は放課後に集まる店があり、楽しい思い出が詰まっていた。「隠岐に帰って自分でやってみよう」と2012年に帰郷した。

 帰郷当初のサラリーマン時代、大阪市内の家具店に併設されたドーナツ店の味に衝撃を受けた。隠岐でドーナツを再現しようと勤務後に黙々と試作を重ね、米国のサイトにあるレシピを翻訳して参考にした。

 近くのセレクトショップへの差し入れが店長から絶賛され、毎週日曜日に店を間借りしてドーナツ販売を始めた。22年12月に町内の仮店舗で半年ほど営業していた。

 目指すのはファストフードの王道、ハンバーガーの販売。森口さんは「何もないので、隠岐を好きになれなかった。ここでハンバーガーのある文化をつくりたい」と目を輝かせる。

 「ベイクハウス ベンチ」は日、月曜が定休日。