秋は新人賞の季節。不透明な他者とともに生きることを肯定する新人小説の登場に励まされた。

▽きらめく生の陰影

 文芸賞受賞作の小泉綾子「無敵の犬の夜」(「文芸」冬号)の主人公は、北九州で暮らす男子中学生の五島界。界は、右手の薬指の半分と小指がない。「指がない人」として性悪な担任から差別を受けたことをきっかけに学校に行かなくなり、地元のファミレスで知り合っ...