スサノオノミコトを祭る須我神社(雲南市大東町須賀)に22日、玉鋼で作った刀剣が奉納された。スサノオがヤマタノオロチ退治で使った「十束剣(とつかのつるぎ)」を模しており、広島市内の会社経営者が寄贈した。スサノオの妻イナタヒメ(クシナダヒメ)を連想させるくしもひすいで作り、刀と一緒に納めた。
贈ったのは、環境関連事業RYOGA(広島市安佐南区)代表の田中芳幸さん(44)。須我神社の勝部和承宮司(86)と縁を深め、2年前から準備を進めてきた。
勝部宮司によると、かつて須我神社に祭られたとされる十束剣は、現在は石上神宮(奈良県天理市)に移されているという。田中さんは、勝部宮司の「いつかオロチ退治の刀を奉納したい」との言葉に共感し、奉納を名乗り出た。同神社がスサノオとオロチの戦いに、くしに化けて同行したイナタヒメも祭っているのにちなみ、くしも納めた。
刀は、日刀保たたら(島根県奥出雲町大呂)の玉鋼を使い、広島県北広島町を拠点とする刀匠三上高慶さん(68)=島根県邑南町出身=が文献を参考に全長88センチの刀を作った。くしは京都市山科区の金石造形作家、今井裕之さん(59)が手がけた。
須我神社でこの日、奉納祭があり、約100人の参列者を前に田中さんは「刀鍛冶を見つけるところから始めた。奉納でき心よりうれしく思う」とあいさつ。勝部宮司は「宮司として最後の仕事だった。長年の念願がかない、立派な刀がお納めできた」と喜んだ。
(狩野樹理)