老眼鏡をかけて鏡の中の自分の顔を確認すると、はっとするときがある。染みやしわが増えて、肌の張りがなくなっている。白髪や1、2本だけ長く伸びた眉毛も目につく。
普段は眼鏡をしないまま鏡に向かっているので気付きにくかったが、どこか直視したくない気持ちも働いていたのかもしれない。周囲の老眼でない人たちには、容赦のない映像が見えているのだろう。
そういえば、内館牧子さんの小説『すぐ死ぬんだから』では〝爺(じい)さん〟の特徴の一つである耳毛に触れてあった。油断は禁物だ。ちなみに眉毛や耳毛が長く伸びることがあるのは、加齢に伴い新しい毛に生え替わる周期が乱れるかららしい。
年を取ると、人の名前がすぐには思い出せなくなったり、姿勢が悪くなったりする。このため頭と体を使うことには注意していたつもりだが、どうやら男性も、きちんと鏡を見ないといけないようだ。
家の三田誠広さんはかつて『団塊老人』という著書の中で「高齢の夫が妻に嫌われないための10箇条」を挙げていた。その第1条は「家の中でこぎれいにする」。第2条は「毎日ヒゲを剃(そ)る」だ。顔の手入れも普段着も、いい加減になるといけないそうだ。新型コロナの扱いが変わり、マスクをせずに動く時間が大半になった。そうなれば、顔のしわや無精ひげも目立つ。今からでも遅くない。鏡で確かめ嫌われないための努力を心掛けよう。(己)