工夫を凝らした作品を鑑賞する来場者=松江市袖師町、島根県立美術館
工夫を凝らした作品を鑑賞する来場者=松江市袖師町、島根県立美術館

 国内の工芸界最大規模の公募展「第70回日本伝統工芸展」(島根県、県立美術館、山陰中央新報社など主催)が6日、松江市袖師町の島根県立美術館で開幕した。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門で厳正な審査を通過した入選全作品557点から、島根6人、鳥取4人の計10人の作品を含む270点を展示。工芸ファンらが、精緻を極めた造形や創造力にあふれた色彩の作品をじっくり鑑賞した。

 全国10会場で巡回し、松江が7カ所目。オープニングセレモニーで県立美術館の藤間寛館長が「他にはない格式高い作品が並ぶまさに伝統工芸展となった」と見どころを紹介した。

 NHK会長賞に選ばれた山本佳靖さん(42)=倉吉市=の作品「焼締窯変壺(やきしめようへんつぼ)」は、豊かな膨らみと深みのある黒色が調和した逸品。外面の中央を走る光は天の川、周辺の光沢は星々のまたたきを想起させる。

 このほか、重要無形文化財「白磁」保持者の前田昭博さん(69)=鳥取市=の「白瓷面取壺(はくじめんとりつぼ)」も展示された。前田さんが技術を研修生に伝授する様子を写真パネルなどで紹介した特別コーナーも設けられている。

 家族で鑑賞した出雲市斐川町上直江の介護職員中谷祐子さん(40)は「精細な技術を突き詰めた制作(の場面)を想像し、どきどきした」と話した。

 会期中無休。10日午後1時半から、前田さんの講演会がある。

 9、10、16、17、23、24の各日は、午後2時から出品作家による展示作品解説もある。

 (小林竜大)