2018年から22年の5年間で、実習先から失踪した外国人技能実習生が島根197人、鳥取185人いたことが分かった。長時間労働や経済的な事情に加え、待遇のよい職場を望んだことが主な要因とみられる。政府が技能実習制度に代わる新たな制度創設を検討する中、島根、鳥取両県は実態把握や相談体制の構築に努める。
出入国在留管理庁によると、島根は18~22年に毎年30人以上が失踪し、最多は19年の48人で、22年は40人だった。鳥取で最も多かったのは18年の53人で、22年は38人となった。
全国は18~22年に3万9906人の実習生が失踪し、22年は9006人だった。同庁によると、失踪の主な原因は、賃金不払いや長時間労働などに加え、入国する際の借金が返済できないなど経済的な事情が背景にあるという。
島根、鳥取両労働局によると、22年の実習生数は島根1549人、鳥取1474人。国籍別はいずれもベトナムが最多で島根717人、鳥取847人、中国が島根232人、鳥取166人で続いた。業種別は両県とも製造業が最多で島根980人、鳥取967人、建設業が島根252人、鳥取161人などだった。
また、島根県雇用政策課が行った県内の実習生の受け入れ企業や支援を行う管理団体などへの聞き取り調査で、交流サイト(SNS)の情報を基に別の働き口を求めるために失踪するケースがあったという。同課は雇用状況や勤務実態の把握を進めるとしている。
6日の島根県議本会議で、吉野和彦議員(公明党県議団)の一般質問に対し、県商工労働部の新田誠部長は「企業側が技能実習制度や外国人特有の問題を理解し、相談できる場をつくることが必要だ」と強調。県として相談窓口の設置や職場で日本語を学ぶことができる体制づくりを進めているとした。鳥取県も相談窓口を設置している。
技能実習制度を巡っては、政府の有識者会議が職場の「転籍」を可能にしたり、受け入れ先の企業に対する監督・指導を徹底したりすることなどを提言。政府は新たな制度の創設に向け、来年の通常国会で関連法案の提出を目指している。
(原暁)