今夏、津和野町日本遺産センターを訪ねた。その建物は、瓦屋根になまこ壁の土蔵風の外観で、通りから少し遠慮がちに奥へと引っ込んでいる。建物に入ると、「津和野百景図」や鷺舞(さぎまい)の衣装など、津和野の歴史や文化を伝える展示物が並んでいる。
一点ずつ興味深く拝見しながら、十数年前に初めてここを訪れた時の光景を思い出していた。当時ケースの中に並んでいたのは、浮世絵師・葛飾北斎とその門人らの作品であった[図1]。それら北斎生涯の代表作、現存唯一の稀覯品(きこうひん)の数々は、2017年に島根県に寄贈され現在、自...