共産党の第29回党大会の初日、決議案を報告する田村智子氏。左は志位和夫氏=15日、静岡県熱海市
共産党の第29回党大会の初日、決議案を報告する田村智子氏。左は志位和夫氏=15日、静岡県熱海市

 23年ぶりの党首交代で「世代交代」をアピールしても、広く国民に受け入れられるのだろうか。野党共闘を再構築していくにも党の理念や基本政策、体質を再点検し、「開かれた政党」に脱皮する改革が必要だ。

 共産党は志位和夫委員長(69)が退任して、新たな委員長に田村智子政策委員長(58)を決定した。

 党勢低迷が続く中、党の顔に初めて女性を据えることで清新さを印象付けるのが狙いだろう。「党の成長、発展のために力を尽くしていきたい」と決意を表明した田村氏だが、野党共闘を進めるのは容易ではない。

 組織の大原則とする分派活動を認めない「民主集中制」は、意思決定の透明性に欠き、異論を徹底的に排除して、自由闊達(かったつ)な論議を阻害していると指摘される。昨年、党首公選制の導入を主張する書籍を出版した元党職員らを除名したことは、それを象徴しており、古い体質を引きずっていると言われるゆえんだ。

 党外に閉鎖的な「怖い組織」のイメージを与え、国民を遠ざけ、他の野党も連携に二の足を踏む要因になる厳格な民主集中制を貫くのか、問われよう。

 創立101年の共産党は、2015年の安全保障法制を巡って、独自路線から野党共闘に転じ、同法制廃止で野党が結集する「国民連合政府」の樹立を提唱、その後の参院選1人区、衆院選小選挙区では独自候補を取り下げ、野党候補の一本化につなげた。

 ただ、党員の高齢化が進行、党勢の衰えは隠しようがない。国政選挙の比例代表の得票は1996年衆院選の726万票をピークに、2022年参院選では361万票に落ち込む。昨年の統一地方選も多くの議席を失う。1990年に50万人近くだった党員も、2020年には27万人余りまで減少した。

 政策的には「国民連合政府」「野党連合政権」構想に向け、国政選挙での野党共闘を進めようと譲歩を重ねた。違憲の立場を取る自衛隊を有事の際には活用する見解を表明。日米安保条約廃棄や天皇制の将来的な廃止の可能性といった持論も連合政権に持ち込まない方針を示し、現実路線にかじを切った。

 しかし、連合政権のパートナーと目す立憲民主党は、共産党との選挙協力に関して、自民党などから「野合批判」を浴びて消極的となり、22年参院選の協力は限定的にとどまった。

 他の野党が共闘に及び腰なのは、表向きは現実路線に転換したとはいえ、根っこの部分が変わっていないことへの警戒感がある。

 具体的には、米国や財界、大企業を敵視する共産党の姿勢だ。野党連合政権にリアリティーを持たせるには、日米同盟や自衛隊の役割を認め、財界や連合などとの関係構築が欠かせない。

 党員にとって100年の歴史と伝統、イデオロギーは何よりも大切だろうが、国民が抵抗感を抱いている現実も直視すべきだ。もう一段の現実路線に踏み込むことができれば、「共産党」の党名変更も検討課題に挙がるかもしれない。

 陰りもあるとはいえ全国に根を張る組織力、しんぶん赤旗を中心とした調査力、個々の国会議員の質問力には定評がある。それを生かすためにも、「表紙」を変えるだけでなく、党の針路を開かれた場で全党的に議論を戦わせてもらいたい。