「生クリーム大福は来るぞ。でも最初のおやつじゃないだろう」
「縁むすびおはぎも来るぞ。でもこれも最初には食べないかな」
大田対局で事前に両対局者が食べるおやつメニューを見せてもらった時、そう思った。日々の暮らしに溶け込み、なじみ深いおやつなので、オーダーはあるだろうと予測した。でも、いきなりはないだろうとも思った。ところが27日初日の午前のおやつで早くも藤井聡太王将(21)が「生クリーム大福」(大田市、御菓子司さつだや)、菅井八段が「縁むすびおはぎ」(出雲市、大惣)を頼んだ。
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大福は奥が深い。いちご大福のように、一見、奇妙な組み合わせのようでも、包容力があって、味としてまとめてしまう。
親戚のおばさんの家のおはぎはどこもうまかった。「うまいね、おばさん。今度、店でも出したら」というのは、意外にお世辞でもない。
素朴な伝統食ゆえに、かえって作り手の温かな心が伝わってくる。
午後のおやつは藤井王将が「朝摘み苺 いちご姫」(大田市、ガトー・サンマリノ)とアイスティー、菅井八段は「生クリーム大福」(御菓子司さつだや)とホットコーヒーだった。


いちご姫はモンブラン。洋菓子にも物語がある。
「朝摘み苺 いちご姫」を提供したのは、地元の洋菓子店、ガトー・サンマリノ。そういえば、昨年は羽生善治九段がこの店のおやつを選んでおり、重富洋介店長は「今年は藤井王将に選んでほしい」と言っていた。
藤井王将が過去の棋戦で選んだおやつの特徴を調べ、イチゴやキャラクター系を好む傾向をつかんだという。今回の品は、イチゴに目を装飾して姫に見立て、キャラクターに仕立てた。事前の入念な準備が実現したといえそうだ。

重富店長、おめでとうございます。
さて、盤面に戻ると、かなりのスローペースと言える。対局者2人は事前に準備した局面になっただろうか。
(板垣敏郎)