「きみだけの夜のともだち」(左)ほか
「きみだけの夜のともだち」(左)ほか

 みなさんは「二人」と聞くと、どんな組み合わせを想像(そうぞう)するでしょうか。今回は、いろんな「二人」が登場する3冊(さつ)の本を紹介(しょうかい)したいと思います。

 1冊目は『きみだけの夜のともだち』(セング・ソウン・ラタナヴァン作・絵、西加奈子(にしかなこ)訳(やく)、ポプラ社)です。夜の暗闇(くらやみ)がこわい男の子・ガスパールが、「夜だけのともだちがいてくれればなぁ。小さくてもいいから」と、眠(ねむ)れずにいた時に現(あらわ)れたのは、小さなネズミの女の子でした。

 はじめはガスパールとネズミの二人だけでしたが、だんだんと仲間が増(ふ)えていき、にぎやかになっていきます。もしかしたら、自分の家にも、たくさんの夜の友達が待っているのかもと、わくわくしてくる1冊です。

 次に紹介するのは『ポビーとディンガン』(ベン・ライス著(ちょ)、雨海弘美(あまがいひろみ)訳、アーティストハウス)です。兄アシュモルと妹のケリーアンは、オパールの鉱山(こうざん)があるオーストラリアの町に住んでいて、ケリーアンには、目に見えない友達のポビーとディンガンがいます。

 ある時、ポビーとディンガンが鉱山で行方(ゆくえ)不明になってしまいます。いつもは妹をバカにしていたアシュモルですが、心配したケリーアンが重い病気になってしまったのを見て、いなくなった二人を探(さが)してくださいと、町中の人に呼(よ)びかけます。はじめは半信半疑(はんしんはんぎ)だった住人たちですが、やがて本気で探してくれるようになります。

 空想の友達が行方不明になる、と聞くとちょっと不思議に思うかもしれませんが、だんだんと自分にもそんな友達がいるような気がしてきて、二人の「目に見えない友達」と兄妹(きょうだい)がどうなるのか、目が離(はな)せなくなる作品です。

 そして、最後に紹介するのは『怪物(かいぶつ)はささやく』(パトリック・ネス著、シヴォーン・ダウド原案、池田真紀子(いけだまきこ)訳、あすなろ書房(しょぼう))です。少年コナーは、重い病気の母と一緒(いっしょ)に暮(く)らしています。学校では、そのことで周囲(しゅうい)からよそよそしくされたり、逆(ぎゃく)にからかわれたりするコナーですが、感情(かんじょう)をあまり表に出すことはしません。

 そんなコナーの元に、ある真夜中、家の近くにそびえ立つイチイの大木の怪物が現れてこう言います。「私(わたし)が三つの物語(自分の昔話)を語り終えたら、四つ目の物語を話すように」と。怪物は、コナー自身が隠(かく)している真実、もっともおそれているものを話すよう強く言います。

 怪物が話す物語は、一見、コナーの物語には関係ないように思えますが、最後まで読むと、実はそうではなかったことに気づかされます。怪物とコナー、二人のやりとりに注目して読んでほしい作品です。

 誰(だれ)かと関わることで、初めて知る考えや、見える景色があると思います。「二人」から広がる物語を、ぜひ味わってみてください。

(古徳(ことく・「とく」は徳の心の上に横棒)ひとみ・境港(さかいみなと)市民図書館司書)