人生には時として災いが訪れることがあります。過酷な運命におそわれた時、自分を支えてくれるのは何でしょうか?
第二次世界大戦下のイギリスで、親がわりの祖母を亡くした12歳のウィリアム、11歳のエドマンド、9歳のアンナは兄妹3人だけになってしまいます。『図書館がくれた宝物』(ケイト・アルバス作、櫛田理絵訳、徳間書店、高学年向き)。保護者(後見人)がいなければ遺産に手をつけることはできません。3人は弁護士の提案で、家族になってくれる人を見つけるために学童疎開に参加します。
本が大好きな3人ですが、疎開先に持って行ける本は一人1冊だけ。疎開先で石造りの図書館を見つけたアンナは、天井まで本が積まれた本棚を見て「ここがあれば何があっても大丈夫」だと思います。
けれども、疎開先の家庭で過ごす毎日は、辛さと悔しさに耐える日々です。村の図書館と、親切な司書のミュラーさんだけが3人の支えでした。3人の兄妹は家族になってくれる人を見つけられるでしょうか?
『アンナの戦争』(ヘレン・ピーターズ作、尾崎愛子訳、偕成社、高学年向き)。戦時下の主人公アンナを支えたのは両親の言葉です。
アンナはドイツ生まれのユダヤ人。学童輸送という制度を利用して、開戦直前にドイツからイギリスへ渡ることになりました。お父さんは「何が起きてもパパの明るく勇敢な娘でいるんだよ。すべてがかたづいたらすぐにいくからね」とアンナを送り出します。
ケント州の田園地帯にあるアシュクーム農場に着いたアンナは、同い年のモリーと弟のフランク、その父母に温かく迎えられます。でも、どんな時もドイツにいる両親のことが気にかかり心配でたまりません。
そのうえ、学校でも敵国ドイツ人としての試練が待ち受けていました。
そんなある日、アンナたちは納屋に隠れていたイギリス軍の負傷兵を見つけます。アンナは偶然、彼がドイツ語でつぶやくのを聞いしまい恐ろしさに震えます。ですがお父さんの言葉を胸に、知恵と勇気をふりしぼってこの事態に立ち向かいます。
最後に紹介するのは『チャンス はてしない戦争をのがれて』(ユリ・シュルヴィッツ作、原田勝訳、小学館、中学生向き)です。「よあけ」「おとうさんのちず」などの、美しい絵本で有名な作者シュルヴィッツの、家族で命が助かった奇跡=チャンスを物語る自伝です。
ポーランドに生まれたウリは、4歳のときなんみんいっしょに難民になります。父母と一緒にソビエトへ逃れますが、以後どこに行っても寒さ、飢え、病気がつきまとい安住の地とはなりません。
作者は少年時か代に「絵を描くことでいくつもの現実や空想の世界を生み出せた。絵を描く楽しさが自分を支えてくれた」と語っています。
あなたには自分を支えるものがありますか?(澤田千鶴子・出雲市立大津小学校学校司書)