空から石が落ちてきた-。映画(えいが)のような話に聞こえますが、現実(げんじつ)の世界にも起こり得(え)ます。ひょっとするとそれは、宇宙(うちゅう)を旅してやってきた「隕石(いんせき)」かもしれません。
地球の重力に引かれ
太陽の周りでは、地球などの八つの惑星(わくせい)だけでなく、大小さまざまな天体も回っています。中には、地球に近づくあまり重力に引かれて落ちてくるものがあります。小さなかけらのような天体は流れ星になって燃(も)えつきますが、大きい天体はそのまま地上へと落ちてきます。これが隕石です。
その名の通り、大部分が石でできているものや、石と鉄がまざり合っているもの、ほとんどが鉄でできているものなど、成分はさまざま。そこから推理(すいり)できるのは、元々がどんな天体だったかということです。
太陽系(けい)ができた約46億年前の物質(ぶっしつ)をそのまま残した「太陽系の化石」のようなものもありますし、ある程度(ていど)大きな小惑星へと成長した後でバラバラになったものや、月や火星の表面からはじき飛ばされた石が宇宙をさまよった後、地球に落ちてきたものも。大阪・関西万博(ばんぱく)の日本館では、火星からやってきた隕石を間近で見ることができますよ。
南極で見つけやすい
隕石を見つけるのは大変です。でも、ある場所に行けば隕石をたくさん拾うことができます。そこは南極です。南極内陸の山脈(さんみゃく)あたりでよく見つかります。
南極内陸部に落ちた隕石は南極表面をおおう分厚(ぶあつ)い氷の動きとともに少しずつ海側へ向けて移動します。しかし、山脈のある場所ではせき止められ、少しずつ集まるのです。何より、まっ白なはずの大地に黒こげの石が落ちているのも、見つけやすい理由かもしれません。
(本田隆行(ほんだたかゆき)・サイエンスコミュニケーター)
略歴
ほんだ・たかゆき 鳥取県三朝(みささ)町出身で、1982年生まれ。神戸(こうべ)大学大学院時代の専門(せんもん)は地球惑星(わくせい)科学でした。日本科学未来館勤務(きんむ)を経(へ)て国内でもめずらしいプロのサイエンスコミュニケーターとして活動中。
目の前に落ちてきたら? 袋ごしにつかんで
もし、目の前に隕石が落ちてきたらどうすれば良いのでしょう。ポイントは「落下直後の隕石はどんな状態(じょうたい)か分からない」ということです。
ある程度(ていど)大きな隕石であれば、まだ熱を帯びているかもしれません。冷えていたとしても、すぐに直接(ちょくせつ)手で拾うのは禁物(きんもつ)。できるだけ新鮮(しんせん)な状態で回収(かいしゅう)するため、未使用の厚手(あつで)のポリ袋(ぶくろ)をうら返し、袋(ふくろ)ごしに隕石をつかんで袋を元に戻(もど)しましょう。
隕石がぬれている場合、ポリ袋の口を開けたまま日かげで乾(かわ)かしておきます。そしてぜひ近くの科学館や博物館へ持って行ってください。
隕石が自分の家に落ちてきたら、屋根に穴(あな)があいたり、車がこわれたりしないか、心配になりますよね。家の火災(かさい)保険(ほけん)や自動車の車両保険が「外部からの飛来物による損害(そんがい)」に対応(たいおう)していれば大丈夫(だいじょうぶ)かもしれません。おうちの人に聞いてみると良いでしょう。万が一の出来事とはいえ、2024年夏には、カナダの民家に隕石が落ちています。次はあなたの目の前に…?