「落語少年サダキチ」(左下)ほか
「落語少年サダキチ」(左下)ほか

 皆(みな)さんは学校や家などで嫌(いや)なことがあって落ち込(こ)んでしまうことありませんか。つかれた心を元気にしてくれる物語を3冊(さつ)紹介(しょうかい)しましょう。

 まずは『落語少年サダキチ』(田中啓文(たなかひろふみ)著(ちょ)、福音館(ふくいんかん)書店)から。

 主人公の忠志(ただし)は勉強も運動もぱっとしない気弱でお人好しの小学5年生の男の子。たまたま助けた酔(よ)っぱらいのおじいさん(実は名人と呼(よ)ばれた落語家)が、お礼にと道ばたで落語を始め、断(ことわ)りきれずに聞いているうちに、忠志は話に引き込まれ落語の面白(おもしろ)さに目覚(めざ)めます。

 そんな忠志は、学校のクラスメートや家族、近所で巻(ま)き起こる珍事件(ちんじけん)や騒動(そうどう)を、愉快(ゆかい)な仲間と大好きな落語で解決(かいけつ)します。

 忠志はピンチを迎(むか)えると、落語の話の舞台(ぶたい)である江戸(えど)時代に突然(とつぜん)タイムスリップします。そして、落語の師匠(ししょう)や落語ばなしの登場人物と出会い、事件の解決の鍵(かぎ)を見つけて現代(げんだい)に戻(もど)ってきます。

 題名の「サダキチ」とはタイムスリップ先の友だちが呼ぶ、忠志のもう一つの名前です。すてきな仲間と笑いがいっぱいの現在(げんざい)1巻(かん)から5巻までのシリーズ本。何巻からでも楽しめて元気をもらえます。

 2冊目は『エイモスさんがかぜをひくと』(フィリップ・C・ステッド文、エリン・E・ステッド絵、青山南(あおやまみなみ)訳(やく)、光村(みつむら)教育図書)。木版(もくはん)と鉛筆(えんぴつ)で丁寧(ていねい)に描(えが)かれた絵本です。

 毎朝5時に起き、動物園へ飼育(しいく)の仕事に向かうエイモスさんは、仕事の合間にゾウやカメ、ペンギン、サイ、ミミズクたちと、一緒(いっしょ)に遊んだり見守ってやったりとそれぞれの特性(とくせい)に合った相手をしてやる、やさしいおじいさんです。

 ところがある日、エイモスさんが風邪(かぜ)をひいてしまいます。エイモスさんのことが気になって仕方がない動物たちはエイモスさんの家にお見舞(みま)いにやってきます。

 エイモスさんと動物たちのほほえましい姿(すがた)、仲間のいる心地よさ、すてきなラストシーンと共に読む人の心を十分いやしてくれるでしょう。

 最後は『月さんとザザさん』(角野栄子(かどのえいこ)作・絵、小学館)。一軒家(いっけんや)にひとりで住む、ああだ、こうだと文句(もんく)ばっかり言ってくらすおばあさんのザザさんは、なかなかのひねくれ者。そんなザザさんの元を訪(おとず)れ楽しいお話を聞かせる空のお月さんとザザさんの物語です。

 遠い昔から、海や森、町や人の心をすみずみまで照らしてきた月さんの話は面白く、ザザさんはいつしか月さんの話を心待ちにするように。そして自分が小さいころ持っていた素直(すなお)でやさしい気持ちを思い出すのでした。

 月さんとザザさんのお話は読む人の心を明るく照らしてくれることでしょう。

 仲間との出会い、本との出合いでどうぞ元気になってください。

(佐藤和子(さとうかずこ)・米子(よなご)市立図書館図書課長)