ほほをなでる風がやわらかくなってきました。桜(さくら)の花も咲(さ)き始めるころかと思います。季節の変わり目は、普段(ふだん)見慣(みな)れている風景の中にも新しい発見があります。少し外を歩いてみませんか? 今回は散歩が楽しくなるような本を紹介(しょうかい)します。
『ダマして生きのびる 虫の擬態(ぎたい)』(海野(うんの)和男(かずお)写真と文、草思社(そうししゃ))。「虫の擬態」というのは、虫たちが自分を食べてしまうような外敵(がいてき)から身を守るために、大自然の中に見た目を溶(と)け込(こ)ませて見つかりにくくしてしまうことです。
この本は、擬態した虫たちの写真と共にその生態を紹介しています。草木をじっと見つめていると、葉や枝(えだ)がゆっくり動き出して「実は虫だった!」なんてことはありませんか?
中には鳥のフンや毒(どく)のある虫に見せかけて危険(きけん)を避(さ)けている虫たちもいるようです。実は気が付いていないだけで、虫たちは忍者(にんじゃ)のようにそこら中に隠(かく)れているのかもしれません。
姿(すがた)は見えなくても自然の生きものたちが生きている、そのしるしを探(さが)してみるのはいかがでしょうか。『哺乳類(ほにゅうるい)のフィールドサイン 観察ガイド』(熊谷(くまがい)さとし著(ちょ)、安田(やすだ)守(まもる)写真、文一(ぶんいち)総合(そうごう)出版(しゅっぱん))。
フィールドサインとは、足跡(あしあと)やフン、葉っぱや木の実をかじった跡などの野生動物たちの生活した痕跡(こんせき)のことです。田んぼのぬかるみや雪が降(ふ)り積もった後などに、動物の足跡を見つけたことはありませんか?
この本では、タヌキやニホンザルといった身近な動物から、北アメリカからやってきて野生化したアライグマ、昨年街中に出没(しゅつぼつ)して話題になったツキノワグマといった野生動物が生活した痕跡も紹介しています。
野生動物に直接(ちょくせつ)会うのは危険ですし、彼(かれ)らも人間との接触(せっしょく)はなるべく避けているはずです。観察する際(さい)のルールやマナー、カメラや服装(ふくそう)など準備(じゅんび)するとよいものも学べます。
動物たちが生活する上で残しているものは、足跡だけではなく巣穴(すあな)もあります。穴に注目してみると、自然の中だけでなく街の中や人間の生活の中にも面白(おもしろ)いものが見つけられます。
『気になるコレクション のぞく図鑑(ずかん) 穴(あな)』(宮田(みやた)珠己(たまき)編著(へんちょ)、小学館(しょうがくかん))を読むと、私たちの周りにはいろいろな穴が開いていることがわかります。マンホールや地下鉄やダム、ビルの換気口(かんきこう)や電信柱にも見られます。
ここではコインの小さな穴から世界の洞穴(どうけつ)の家、石見銀山(いわみぎんざん)の鉱山遺跡(こうざんいせき)、果てには火山でできた巨大(きょだい)な穴まで紹介されています。穴にはそれぞれに理由や歴史(れきし)があるようです。
外に出て、「不思議だな」と思うものを見つけたらぜひ調べてみてください。きっと面白い世界が広がってくることでしょう。
(寺本真紀子(てらもとまきこ)・島根中央高校学校司書)