遠い場所にいても届(とど)けることができる、手紙。遠い国から届く手紙を待っているのは、『人形からとどいた手紙―ベルリンのカフカ』(ラリッサ・トゥーリー文、レベッカ・グリーン絵、野坂悦子(のざかえつこ)訳(やく)、化学同人(かがくどうじん))に登場する女の子です。
ある日、人形がいなくなって泣いていた女の子に、男の人が声をかけます。男の人は、人形の手紙を預(あず)かる郵便屋(ゆうびんや)だと言い、いなくなった人形からの手紙を届けてくれました。手紙によると、人形は、冒険(ぼうけん)に出かけたと言うのです。人形は、世界中のいろいろな国へ行き、旅での出来事(できごと)を手紙で女の子に知らせてくれました。しかし、手紙の文章は、だんだん短くなっていきます。ある日、郵便屋さんは、人形からの最後の手紙を女の子に手渡(てわた)しました。
この絵本は、フランツ・カフカというドイツの作家と、カフカが出会った女の子の実話を元に書かれています。カフカと女の子の、実際(じっさい)のエピソードについてもあとがきに書かれていますので、合わせて読んでみてくださいね。
遠い国だけではなく、空の上と下(げ)界(かい)を行き来して郵便を届けてくれる郵便屋さんもいます。その名も『そらのゆうびんやさん』(くまくら珠美(たまみ)作、理論社(りろんしゃ))。空へと旅立った動物たちの元に、下界からの郵便を届けてくれるのです。
郵便屋さんが届けるものは、どれも下界で一緒(いっしょ)に暮(く)らした人たちの思いや下界での思い出がたくさん詰(つ)まった、温かな気持ちになるものばかり。動物たちは、笑顔で郵便を受け取り、下界の人への贈(おく)り物を郵便屋さんに預けます。動物たちから預かったものをかばんに入れ、空へ飛んで行く郵便屋さん。今日も郵便屋さんは、誰(だれ)かの思いが込(こ)められた郵便を届けるため、空の上と下界を行き来しているかもしれませんよ。
郵便局で『ゆうびんやさんおねがいね』(サンドラ・ホーニング文、バレリー・ゴルバチョフ絵、なかがわちひろ訳、徳間(とくま)書店)と言っている人がいます。それは、おばあちゃんへ郵便を送ろうとしている、コブタくんです。
もうすぐ誕生日(たんじょうび)を迎(むか)えるおばあちゃんをぎゅっと抱(だ)きしめてあげたいと考えたコブタくんは、郵便局へ行って、特大サイズの「ぎゅっ」を届けてもらうことに。窓口(まどぐち)のイヌさんから、手紙を仕分ける係のヤギさん、運転手のウサギさんへと、次々に「ぎゅっ」がバトンタッチされていき、無事におばあちゃんの元へ届きました。
郵便屋さんたちみんなをにっこり笑顔にしたコブタくんのすてきな郵便に、おばあちゃんも大喜(おおよろこ)び。コブタくんに返事を出そうと、郵便屋さんにあるものを届けてほしいとお願いしました。
「ぎゅっ」を郵便で届けるなんて、すてきな思いつき。こんな郵便が届いたら、うれしくなりますよね。皆(みな)さんなら、大好きな人へ、どんな郵便を届けたいですか?
(内田絢子(うちだあやこ)・島根県立大学松江(まつえ)キャンパスおはなしレストランライブラリー司書)













