「やっぱり犬がほしい」(写真右下)ほか
「やっぱり犬がほしい」(写真右下)ほか

 「犬が飼(か)いたい!」「だめ!」このやりとりをしたことがある人もいるのでは。

 『やっぱり犬がほしい』(スギヤマカナヨ著(ちょ)、アリス館)にも、そんなやりとりが描(か)かれています。犬が飼いたい男の子。反対するお父さんとお母さん。でも、男の子はあきらめません。早起きをして散歩ができるアピールをしたり、図書館で犬について調べノートにまとめてみたり、思いを伝えようと粘(ねば)る男の子。その頑張(がんば)りがお父さんたちに通じ、犬を飼うことができるようになります。

 この本、裏(うら)返して読み始めると、飼い始めた犬とのお別れのお話が始まります。いつかお別れもあるということ、そして、犬の保護(ほご)処分(しょぶん)についても書かれており、動物の命、飼うということの責任(せきにん)についても教えてくれます。

 この人の粘りも、負けていませんよ。『炎(ほのお)をきりさく風になって』(フランシス・ポレッティ、クリスティーナ・イー作、スザンナ・チャップマン絵、渋谷弘子(しぶやひろこ)訳(やく)、汐文社(ちょうぶんしゃ))は、マラソン大会への出場を反対されたボビーという女性(じょせい)の実話です。なぜ反対されたのか。それは、当時女性は、マラソン大会に参加することを禁止(きんし)されていたから。それでも大会に出場したかったボビーは練習を重ね、タイムもどんどん速くなっていきます。マラソン大会が開催(かいさい)されることを知ったボビーは、あることをひらめいてマラソン大会に出場します。でも女性だとばれてしまっては、途中(とちゅう)で止められてしまう! ボビーは、最後まで走ることができるでしょうか?

 男の子や、ボビーみたいに、粘り強く頑張れる人もいますが、「だめ!」と言われて、引っ込(こ)んでしまう人もいますよね。『チャンプ-風になって走れ!』(マーシャ・ソーントン・ジョーンズ作/もきかずこ訳/鴨下潤(かもしたじゅん)絵、あかね書房(しょぼう))に登場する小学生のライリーは、後者の男の子。彼(かれ)は運動が大の苦手(にがて)で、いろいろなスポーツに挑戦(ちょうせん)してはやめ、挑戦してはやめての繰(く)り返し。今やっている野球をやめるなとお父さんに言われ、「やめたい」ということができません。そんなとき、事故(じこ)で3本足になった犬チャンプを飼うことに。チャンプを飼うことは本当に大変で、家族の気持ちはバラバラになります。そんな家族を救(すく)ってくれたのは、周りの人、野球仲間、そして、3本足でも頑張るチャンプでした。

 何もかもうまくいかないとき、人のせいにしたり、できない自分が嫌(いや)になったり。そんなとき、「1人じゃないよ、大丈夫(だいじょうぶ)だよ」と前を向かせてくれる1冊(さつ)です。

 やってみたいことがあるとき、迷(まよ)っているとき。本の主人公たちが、みなさんの背中(せなか)を押(お)してくれるかもしれません。

 (尾崎智子(おざきさとこ)・島根県立大学松江(まつえ)キャンパスおはなしレストランライブラリー司書)