「ありのままに生きてます」(左上)ほか
「ありのままに生きてます」(左上)ほか

 3月3日は、「ひなまつり」ですが、「世界野生生物の日」でもあります。絶滅(ぜつめつ)のおそれのある動植物の保護(ほご)と国際的(こくさいてき)な取引(とりひき)の制限(せいげん)を目的とした「ワシントン条約(じょうやく)」が採択(さいたく)された日として定められました。

 『ありのままに生きてます 見習いたくなるいきもの物語』(加藤英明(かとうひであき)著(ちょ)、秦本幸弥(はたもとゆきや)ストーリー、らいらっく絵、KA(カ)DO(ド)KA(カ)WA(ワ))は、七つの生きものの生き方を物語形式で紹介(しょうかい)しています。

 カマキリはメスがオスを食べることで知られていますが、この本では、メスカマキリの貴理子(きりこ)さんとオスカマキリの鎌助(かますけ)くんの視点(してん)で出会いから結ばれるまでが描(えが)かれています。

 貴理子さんにたくさんの卵(たまご)を産んでもらうため、自分の身をささげる鎌助くんの姿(すがた)は切ないものがあります。

 他にもナマケモノやシロクマ、クマノミなどいろいろな生きもののふしぎな生態(せいたい)について楽しく学べる1冊(さつ)です。

 『捨(す)て犬・未来(みらい)ときらら、イノシシにであう!』(今西乃子(いまにしのりこ)著、浜田一男(はまだかずお)写真、かけひさとこ絵、岩崎(いわさき)書店)は、野生動物イノシシについて、飼(か)い犬のきららが同じ動物なのに、何がちがうのかを考えます。

 ペットは人間の家族として生きていますが、野生動物は人目につかない自然の中で自立して生きています。しかし、最近は野生動物が人間の住むところにあらわれ、畑や田んぼを荒(あ)らす被害(ひがい)がふえてきました。

 なぜイノシシたちは人間の住む場所に出てくるようになったのか。なぜ〝やっかいもの〟として駆除(くじょ)されてしまうのか。駆除されたイノシシはどうなるのか。

 実(じっ)際(さい)のイノシシの駆除や解体(かいたい)の現場(げんば)にも出向き、人間と野生動物それぞれが安心して暮(く)らすためにはどうしたらいいのかを考える1冊です。

 『海にしずんだクジラ』(メリッサ・スチュワート作、ロブ・ダンラヴィ絵、千葉茂樹(ちばしげき)訳(やく)、藤原義弘(ふじわらよしひろ)日本語版(ばん)監修(かんしゅう)、BL(ビーエル)出版(しゅっぱん))は、1頭の大きなクジラが死に、海の底に沈(しず)むところから始まります。

 クジラの命は終わっても、深海の生きものたちにとっては命をささえてくれる「すばらしいおくりもの」。さまざまな生きものたちがクジラに集まり、50年をかけて食べつくす様子が描かれています。

 人間が入れない海の底では、ひとつの命がたくさんの新しい命の源(みなもと)となり、豊(ゆた)かな自然を育てています。

 こうした自然を守るため、野生動物について興味(きょうみ)をもつことから始めてみてはいかがでしょうか。

  (中村千絵(なかむらちえ)・浜田(はまだ)市立三隅(みすみ)図書館司書)