作成したウェブアプリを説明する俵恵太君=松江市末次町、松江市役所
作成したウェブアプリを説明する俵恵太君=松江市末次町、松江市役所

 独自のプログラムで制作したアプリやロボットなどを競う「全国選抜小学生プログラミング大会」で、食品の賞味期限を登録しロスを減らすウェブアプリを開発した島根県代表の俵恵太君(12)=島根大付属義務教育学校6年=が、山陰両県勢初の上位となる審査員特別賞(7位)に輝いた。レシピ検索や家族で情報共有できる利便性が評価された。10カ月かけたという労作の裏話を聞いた。

 ■Rubyで10カ月かけて

 俵君は小学3年でプログラミング教室に通い、教育用言語の「スクラッチ」を学習した。

 2年連続で全国大会に出場。今大会は松江発のプログラミング言語「Ruby(ルビー)」を使いたい」との思いから、Rubyを使いやすくした「Ruby on Rails(ルビーオンレイルズ)」を利用した。本格的なウェブアプリを作るのは初めてで、コードを打ち込むのに苦戦。10カ月かけて開発した。

作成したウェブアプリを説明する俵恵太君=松江市末次町、松江市役所

 ■料理レシピの検索機能も

 アイデアは、母親が食品の賞味期限を手書きで管理しているのを見て思い立った。
 完成したウェブアプリ「もったいない! 食品ロスを減らそう!」は、食品名と賞味期限を登録すると、期限が近い順に並んで表示される。買い物先でも家にある食品を確認でき、重複購入を防げる。アカウントを共有し、家族間で閲覧できる。登録した食品を選択し、料理のレシピを検索できる機能も備え、賞味期限の近いものを消費しやすくした。

賞味期限を登録した食品の一覧

 楽しく食品ロスを減らせる工夫も施した。消費した食品をリストから消去する際に「使い切った」ボタンをクリックすると「食品を消費しました! おめでとうございます!」と称賛メッセージが出るように設定。さらに月ごとの消費実績をグラフで可視化させ、達成感と次の月へのやる気を引き出せるようにした。

月ごとの消費した食品の割合が一目でわかるグラフ

 母智恵さん(46)は「実績が分かるグラフやレシピ検索など手書きではできなかった機能が便利。食品を買いすぎないよう意識するようになった」と話す。

 ウェブアプリは「フードバンクしまねあったか元気便」などのフードバンクに試験的に利用され「今までは人の目で確認していたが、簡単に管理できてミスを減らせる」との意見をもらったという。今後、個数を選択して同じ商品を一度に複数登録できる事業用機能を付加し、利便性を上げる。

 ■「LINE通知機能も付けたい」

 松江市役所であった受賞報告で、俵君はルビー開発者のまつもとゆきひろさんらの前でアプリの内容を説明。今後も改良を重ね、バーコード読み取りによる食品登録や、期限が近くなった商品をLINE通知で知らせる機能も付けたいと話した。

 まつもとさんは、プログラミングで重要なのは、コンピューターと向き合うのではなく、人間の困りごとと向き合う姿勢とし「俵君は非常にいい感性を持っている。これからも伸ばしてほしい」とたたえた。

受賞記念の盾を手に、ルビー開発者のまつもとゆきひろさん(左)と写真に収まる俵恵太君=松江市末次町、松江市役所

 俵君は「10カ月間、頑張って作った。フードバンクや一般の人に使ってもらい、食品ロス削減につなげたい」と話した。

 大会は東京都内であり、共同通信社と山陰中央新報社など加盟する新聞社でつくる全国新聞社事業協議会が主催した。4回目となる今回のテーマは「みんなのみらい」で全国から1034組の応募があり、地方大会を勝ち抜いた代表46組が出場した。

(小引久実)